2008年06月24日

[cinema]イースタ・プロミス

原題:Eastern Promises
監督:デビッド・クローネンバーグ
脚本:スティーブン・ナイト
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ,ヴァンサン・カッセル,アーミン・ミューラー=スタール
公式サイト:http://www.easternpromise.jp/

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の監督・主演が再び組んだ,ロンドンの裏社会に潜むロシアン・マフィアを題材にしたバイオレンス色の高い作品。

さすがR-18指定だけあって,冒頭からカミソリで首を掻っ切り,その切り口までまざまざと見せるという,他のマフィア映画でもなかなかお目にかかれないえぐいシーンで始まる。

ただ,こういったえぐいバイオレンスが連続するわけではなく,本作で話題になっているらしいヴィゴ・モーテンセンの全裸モザイクなしで挑んだアクションシーンでの血の飛びっぷりは圧巻だが,その他で直視したくない痛々しいシーンはあまりなく,『ヒストリー〜』と比べて暴力性はだいぶおとなしいと感じた。

バイオレンス一辺倒というわけではなく,主役はあくまでストーリー。だが,ロシアン版『ゴットファーザー』のようなマフィアの社会を徹底的に描く作品というわけでもなく,あくまで生真面目ゆえに巨大な脅威に足を踏み出してしまったナオミ演じるアンナと,マフィアの一員でありながらアンナを何度も助けるヴィゴ演じるニコライの,決して交わることのなかった二人の間で築き上げられていく奇妙な関係を主軸にした人間ドラマになっている。
アンナが不思議に思いながらも,なぜか色々と助けてくれるニコライに対して信頼していく展開にご都合なところは感じず,最後の最後でほんの少しロマンスを感じさせるシーンは蛇足だったものの,短い上映時間であるにも係わらず,丁寧に納得できる形で描かれていた。

また,この映画での人間ドラマにおいてはずせないのが,マフィアのボスの息子であるヴァンサン・カッセル演じるキリルの存在。
威勢を張って悪人として振舞ったかと思えば,父親の力を恐れて子供のようにびくついて精神的に不安定になったり,ニコライにすがる情けない姿は,個人的に抱いていたカッセルの役柄とイメージがだいぶ違った。
だが,そんなイメージを忘れさせるくらいカッセルはキリルという役に嵌っており,彼の壊れていく姿や,ニコライに対する依存が徐々に強くなっていく過程は,シナリオのうまさもさることながら,カッセルの演技によってより説得力を持たせていた。

本年度のアカデミー賞にノミネートされたヴィゴの演技については,無表情で何を考えてるのか分からず,冷酷な裏社会のプロの顔を見せる一方で,キリルやアンナの前では情に厚くてやわらかい表情を見せるという,対極的な二面性を持つキャラクターを,抑揚のきいた演技で見事に演じきっていた。
これならアカデミーにノミネートも納得だが,それ以上に,イメージのギャップもあってカッセルのほうがインパクトがあったので,ちょっとかすれてしまったようにも感じる。

一番の見せ場と言えるだろう全裸でのファイトシーンは,手に汗握るというのを通りすぎて心臓が止まりそうなくらい緊張感溢れるシーンに仕上がっていた。
映画としては"たった二人"と形容できそうなところを,一方は武器なし全裸,一方は片手にナイフ持ったごつい二人組みというシチュエーションにすることで,この作品は"たった二人"とは別次元の,とんでもなく心臓に悪い恐ろしいシーンにしている。
その恐ろしさや,ナイフによって切り刻まれ,血だらけになっていくニコライの姿は痛々しくて観ていられないが,なぜか生物として死に物狂いで生き抜こうとするニコライから目を離すことができず,全てを見届けないといけないという気持ちにさせられる。ここ数年,これほどまでに惹きつけられるシーンというのはほとんどないのではないだろうか。それくらいインパクトあるシーンであった。

そういえば,一体どうしたら全裸でアクションするという状況に陥るんだ,と観る前は不安に思っていたのだが,映画が進むにつれてまるでそうなることが必然であったかのような流れが見事に作られていた。こういうインパクトのあるシーンになる場合,伏線も何もなく突如発生するか,訳の分からない伏線が張られたりするものなんだが……。とにかく,このストーリーテリングには久しぶりに「うまいな」と,唸らされた。
タグ:ドラマ 映画
posted by タク at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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