2008年07月15日

[ライトノベル]付喪堂骨董店4―“不思議”取り扱います

存在を薄めてしまう小瓶,考えていることを読むことができるイヤリング,運命の赤い糸を見ることができる指輪。それら不思議な力を持つ道具−アンティーク−を題材にした短編集の4作目。今回もいつもと変わらぬパターンの4編が収録されていた。



存在を濃くする黒い小瓶と,存在を薄くする透明な小瓶。目立つことを嫌った人間が,透明な小瓶を手に入れた時どうするのか,が題材のミステイクを狙った話。

相変わらずミステリー初心者くらいにしか誤魔化しが利かない内容。前作まではまだよかったが,4作も同じクオリティが続くと,さすがに物足りなさを感じる。

なぜ同級生の女子生徒のことをみんな忘れていっていくのか,誰が彼女の存在を薄め,追い詰めているのかを探る過程は読み応えはあった。だが,真相への伏線張りが少なく,しかも少ない伏線はオチがあっさり分かる出来なので,真相にいきついた時の驚きとカタルシスがあまり得られない。

また,久しぶりの新刊なので一発目で改めてアンティークというものが人の身を滅ぼしかねない存在であることを再認識させるようなオチを持ってきたのはいいが,これって別にアンティークなくても……と無粋なつっこみが思わず頭をよぎったのだが,それは言わないお約束ということだろうか。


ギャンブル

人の心を読むことができるアンティークを持った男と,死を可能性を視るアンティークを持った刻也が,咲を賭けてポーカー対決する話。

何かと不要としか思えないアクションが絡んできた刻也のアンティーク"ビジョン"が活躍するエピソードだけど,今回はアクションは一切なし。そういや前作もアクションが一切なかったけど,アクション不要説を唱えていたのが届いたのだろうか,と勝手に妄想。

ポーカー対決,しかも相手は心を読んでくるとあってどんな心理戦が繰り広げられるのかと思ったが,ラストゲーム以外は相手に咲を賭けの対象として取られ,嘲笑われたことで激怒する刻也が相手に翻弄されまくるシーンが長く続くし,緊張感というものが感じられないためテンポが悪いという印象ばかりが残る展開になっていた。

相手が心を読むアンティークを持っていることを見抜いた後のラストゲームは,"ビジョン"を使った意外な奇策による心理戦がかなり緊迫した雰囲気がたっぷり出ていたこと,アンティークを手放すことになってしまった男の結末の描き方がよかったので,テンポの悪かった部分は帳消ししてもいいくらいではあった。

それでも,やはりカジノというものを題材に扱うならどう転ぶか先の読めない心理戦に重点を置いてほしいと思うだけに,中盤の展開はもう少し削っておけばよかったと思う。


小指

運命の赤い糸を見ることができ,また,赤い糸を切って他人に結びつけることもできる能力をもった指輪を持った少年の話。

恋多き幼馴染の少女の恋を助けるために,何度もアンティークを使って相手の運命の赤い糸を強引に幼馴染につなげてやることで恋を成就させてやる少年。正直,異常とすら思える愛情表現を見せる少年には薄ら寒いものを覚えたけど,それ以上にきついのがラスト。

このエピソード,何を思ったか意外というかちょっとしたどんでん返しなオチが待っており,それが切ないというより欝な感じになっている。最初は「なんじゃこりゃ」と納得いかなかったが,改めて読み返してみると,ラストの展開を予見させる一文が伏線と思わせるようなそぶりを見せずにさりげなく挿入されていて,してやられたと思った。

また,起承転結もうまく描かれており,このシリーズで一番完成度の高いエピソードなんじゃないかと思った。


秘密

刻也と咲のいつものすれ違いネタ。赤い糸を見ることができるアンティークを渡された咲が,出来心で刻也の赤い糸を見るために指輪を嵌めていたら,その指輪を見た刻也がそわそわしだし……という,いつもとは逆で,刻也が勘違いして暴走する話。

すれ違いネタは,咲がズレた勘違いをしているから面白いというか萌えられる話であって,それ以外はとてもじゃないが下手なラブコメやってるだけという印象だっただけに,今回のように刻也のほうに視点をずらしたのはちょっと失敗かな。

咲の勘違いな心理描写は描かれているものの,あくまで主になってるのは刻也。咲なら許せた自分の気持ちへの誤魔化しも,男キャラでははっきりしなさすぎの優柔不断キャラにしか見えず,もどかしいというよりイライラする。

ラストではちょっと素直になっていたんで,次巻以降のすれ違いネタはもうちょっといい仲にした上でやってほしいとこだなぁ。いつまでも,別に好きとかそういうのじゃない,みたいなのは勘弁だわ。


付喪堂骨董店 4―“不思議”取り扱います (4) (電撃文庫 お 9-7)
御堂 彰彦
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posted by タク at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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