2008年07月23日

[ライトノベル]銀色ふわり

とてもベタだが,2人の少年少女が織り成す儚いストーリーがじんわりと胸に染み込む泣き系。

"黄昏の子供たち"と名づけられた,地球上の生物から無意識に無視され,またその子供たちも生物を認識できないという症状にかかった少女と,その少女を唯一認識することができる少年の交流を描いたストーリーなのだが,シチュエーションはちょっと違っているものの,交流を経てお互いが大事な存在になっていく過程は,どこか『紅』のような雰囲気を感じさせる。

『紅』と例に挙げたとはいえ,あれほどの暗さや背伸びしたりひねくれたりといった厨二臭はなく,かといって明るいわけでもなく,その年齢が抱えるにはちょっと重い問題はあるものの,少年少女という年齢に対する身の丈にあったストーリーに仕上がっている。
また,『いぬがみっ!』のヒットでコメディ系の印象強かった作家さんだが,コメディ的なことは一切なし,さらに物語を盛り上げるために主人公とヒロインを狙う悪の組織が登場することもない。

用語解説もそこそこに切り上げるというところも含め,余計なものは極力排除された形で2人の交流が描かれているため,ストーリーに起伏や見せ場というものがなく,盛り上がりに欠けて地味な作品になっている。
だが,その分2人の物語に没頭することができ,読み終わったときには,2人の行く末が果たしてどうなっていくのかを思わず想像したくなる終わり方をしていたのはよかった。ただ一点,続編を出すこと前提であることを除けば。

こういう感動系の話は,できる限り1冊で完結させ,ほかに終わっていない物語なんかあったとしても,そこはアフターストーリーを読者が勝手に想像して楽しむという形にするほうがいいと思っている。それだけに,最後の最後で主人公と同じ能力を持っていた少年と彼と親しかった"黄昏の子供たち"の末路を描いたときはちょっと嫌な予感を感じ,そして,案の定あとがきで続編出す気まんまんのコメントを見た瞬間,野暮なことやりおって……と感じた。

とはいえ,無駄にエピソードを詰め込んで結末を先送りしたりしないという条件つきで,2人の物語をもう少し見守ることができるのはちょっと嬉しい。早く続編(と完結)を読みたいところだ。

その他,つい最近映画でも見たことあるような子供があまり生まれなくなった世界だとか,主人公の妙なトラウマだとか,ストーリーには全然絡んでこない壮大な風呂敷が広げられていたが,これは今度どう絡んでくるのだろうか(できれば一切絡まないと嬉しいところだが)。てか,そもそもこの風呂敷って必要なのだろうか。
正直,なんとなくかっこいいからとか,悲壮感があるからといった話を壮大にするためだけの考えなしの設定のように感じるが……。まぁラノベだし,こういう無駄な風呂敷広げて投げっぱなしというのはよくあることだから気にしなくても平気か。


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posted by タク at 23:55| Comment(0) | TrackBack(1) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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