次元の違う宇宙を繋ぐ<多次元交差点>にあるホテルを舞台に,個性と種族豊かなキャラクターたちが何でもありのドタバタ劇をやるというコメディなのだが,肝心のコメディ部分がいまひとつインパクトに欠けるものがあった。
インパクトに欠ける要因として,ほぼ唯一と言っていいボケ担当の少年・ミサキというキャラクターのボケが2,3パターンくらいしかなく,序盤でほぼ全てのボケを見せたせいで,中盤からのボケが「またこれか」という飽きを感じさせるものになってしまっている。さらに,つっこみのほうも,主人公のまひるのキレ芸や,ミサキの保護者のようなチビっ子キャラのココによる反省室行きくらいしかなく,それに対するミサキの言い訳や許しを乞う台詞も含めてパターン化しすぎてて,これらもまた飽きを感じさせる要因となっている。
地球とは違う宇宙に住むホテルの客人たちにもボケるやつがいるにはいるのだが,飽きたと思うミサキほどのボケを見せるわけでもなく,数多く出てくるキャラクターの一人程度の位置づけにしかなっておらず,せっかく個性豊かなキャラクターを揃えたはずなのに,それを笑いに活かしきれていないという印象ばかりが残った。
また,ストーリーを盛り上げるためか,終わりのほうには事件が発生して犯人とバトルを繰り広げたり,ミサキの過去にまつわる秘密やらを混ぜたりして,中途半端に真面目なストーリーを展開し始めたのもマイナス。
序盤でも<多次元交差点>とは何か? といった必要かもしれないがコメディやるんだったら別に不要とも思える解説をしたりしていたので嫌な予感はあったが,まさかコメディに徹しきれずに悪い意味でラノベらしいストーリーをやらかすとは……。もっと何も考えずにボケとつっこみの応酬が待っていると期待していただけに,ちょっと真面目なストーリーというのはやらないでほしかった。
一応続編が予定されているようだが,続編ではもっとバカに徹して多彩なキャラクターたちを(バカな方向で)活かしてほしいところだが,さて……。
多次元交差点でお茶づけを。 (角川文庫―角川スニーカー文庫)
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本保 智
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