2008年08月01日

[ライトノベル]黒乙女―シュヴァルツ・メイデン― 黒き森の契約者

主人公である少女の毒舌とは程遠い口汚いだけの台詞の応酬に投げ出しそうになったが,そんな性悪な口がほんの少し変化するターニングポイントを迎えるまで耐え切った時,思いがけない良作に巡り合えたと感じることができた。

世間とはずれたセンスを持ち合わせるお嬢様のマリーと,彼女から怪奇事件の調査を依頼された人間嫌いで毒舌少女のシェルーナが,<異界>と呼ばれる世界との戦いを繰り広げるという,ラノベらしいファンタジーもの。

冒頭にも書いたが,前半は主人公シェルーナの毒舌の意味を勘違いした口汚さと他人を見下した台詞が目立ち,彼女の保護者を自称する青年のルビアスの(これまた周囲を見下した)台詞と態度も相まって,かなりイライラさせられる。
さらにお約束なのか,そんな2人の言動にマリーが奇声を上げながらキレるというお決まりのパターンが展開されるのだが,裏表がなくて感情がストレートに表現するいい娘キャラだと感じつつも,毎度毎度律儀にキレるしつこさに多少のストレスを感じた。

これだけなら後は適当に流し読みしてさっさと切り上げようと思うところだが,そうさせないだけの,この作品独自の世界観というものがあって,キャラクターたちのマイナス面を補ってくれた。

独自の世界観と言っても,魔術やら<異界>やらなんやらと既存のファンタジーに出てくるものばかりなのだが,それら定義が既に決められている用語たちに作者独自の概念(これまで読んだ範囲ではお目にかかったことのないので,本当にオリジナルなのかは断言できないが)を取り入れ,それが読んでいて新鮮な気分にさせてくれる。

また,それらの概念について必要以上に語ることなく,原理が分かる程度の最小限の説明しかせず,深すぎるところは曖昧なもので済ませるという裁量も好み。もしかしたら,あまりディープな設定にしたり語ったりするのが面倒だっただけかもしれないが,どちらにしろ,設定を語ることばかりに重みがいっていない点は好感を覚えた。

後半になると,ある出来事をきっかけにシェルーナとマリーだけで事件の調査をすることになるのだが,そこから2人の少女が衝突しながらも互いに助け合って事件に対峙していく姿勢やら,キャラクターの掘り下げが進められていくにつれ,嫌だと思っていた言動にも彼らなりのそうせざるを得ない理由を知っていくこととなる。これがいい意味で前半と後半でキャラクターたちのギャップを生み,魅力的なキャラクターへと変貌していった。

後半からの展開でキャラクターたちにギャップを生んで魅せたことで思わぬ良作となったが,これを狙っていたとしたら,この作家はなかなか侮りがたいものがあると感じる。次回作(あればだけど)が真価の見せ所だが,早く続編でも新作でもいいから次の動向が気になる作家の一人にはなった。


posted by タク at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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