2008年08月09日

[ライトノベル]シフトV ―世界はクリアを待っている―

単行本から文庫への移植を経て,ついに待望の最新刊となったファンタジー小説の3巻目。前巻で"魔王"としての運命を受け入れることにした赤松,異常なシフトをしている高嶋空,そして"勇者""魔王"のほかに新たに登場した"お姫様"の存在がどれだけ描かれるのかと思ったが,多くの要素はほとんど語られることがなかった。

今回は1,2巻よりも時系列を少し過去に戻って,シフト世界でカレンという女戦士の意識に乗り移った空の視点で,サラマンデルだった頃のラケルとカレンの邂逅,そして悲劇が語られる。

これまでと違い,3人称+1人称だった語り口が全て空の1人称になっており,3ヶ月連続という短いスパンでシリーズを読んできただけに少し違和感を感じるものがあった。ただ,読み進めていくにつれてシフト世界を知らない空の視点のみから語られたことで,カレンが何者であるかとか,シフト世界のことといった膨大な情報がある程度カットされ,空とカレンという2人の少女の内面が掘り下げることにリソースが割かれている。

シフト世界で切磋琢磨するのではなく,あくまで2人の少女の友情やそれぞれが抱える苦悩を中心に描いたことで,前作のようなダークな雰囲気にもならず,ラストの空とカレンの身に起きる悲劇と解放,新たな出会いをとてもつらくて切なかったが,同時に晴れやかな気分にもさせてくれた。

また,過去の話ということもあり,これまで語られてこなかったラケルがサラマンデルだったころのエピソードや,2巻でリカルトが何故ラケルをあれほど憎んでいたのかというのを垣間見ることもできたり,これまであまり語られてこなかったシフト世界とはそもそも何か,"勇者"や"魔王"とは一体何を指しているのか,といったキーワードに関することも語られたりと,多くの伏線も張ってあったりして,相変わらず続きが気になるネタをうまく提示している。

ちょっと気になったのだが,単行本の1,2巻から直接3巻を読む人に向けてなのか,まさか3巻から読む人を想定したのかは定かじゃないけど,これまで語られてきたシフト世界の用語に対する解説がちょっと鼻についた。
3巻で初めて出てきた用語も多々あるにはあるものの,いくらシフト世界のことを知らない空の視点だからって,これまで語られてきたネタも解説するというのは,ちょっと冗長じゃないかと感じた。

とりあえず新刊が登場したものの,まだ世界のクリアには程遠く,"お姫様"はおろか"勇者"も"魔王"も定まっていない状態。あくまで空の一つの物語が終わったにすぎないだけに,物語の完結までシリーズが出てくれることを祈りたいところだが……。


シフト 3―世界はクリアを待っている (3) (電撃文庫 う 1-22)
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posted by タク at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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