2008年08月19日

[cinema]ハプニング

原題:The Happening
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:マーク・ウォールバーグ,ズーイー・デシャネル,ジョン・レグイザモ,アシュリン・サンチェス
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/happening/

シャマラン先生の最新作である人類滅亡をテーマにした『ハプニング』を観て,どれだけ叩かれようと,どれだけ批評家がバカにしようと,先生はやりたいことをやるために暴走しているほうが型に嵌らない面白いチャレンジができるということを確信した。

突如公園で起こった謎の集団自殺。その謎の自殺行為は次々と人々に伝染していき,日常はやがて人々の自殺と死体の山によって壊れていく。そんな得体の知れない恐怖から逃げるため,人気のないところへと旅立っていくというストーリー。

『サイン』の時に『鳥』から発想を得たという話をしていた先生だけど,世界の危機から逃げるために家にひきこもり,真偽がはっきりとしない曖昧な情報だけが手に入るという閉鎖的な『サイン』に対し,今回は住んでいた場所から逃げるし,危機の詳細は分からなくても正しい情報を得られる開放的な『ハプニング』と,方向性としては正反対な作品だが,どっちも『鳥』の影響が大きいと感じさせる。ただ,これって『鳥』というより,見せる敵が襲ってこないだけで『宇宙戦争』のほうがイメージとして近い気はするけど。

開放的なもんだから,変なおっさんの助言はあったものの,謎の自殺現象が何に起因しているのかということまで作中で判明し,判明したとたんに色々穴が見えてくるという自爆をやらかしてはいるものの,本人も分かっててリアリティを追求する気もさらさらなさそうだから,気にしたら負け状態に思っておくべきなのかもしれない。だから気になっても気にしないことにした。

ただ一ついえることは,謎が分かったからといってつまらなくなるわけじゃなく,それまで正体不明の何かにおびえていたのが,今度はどこまで行っても逃げ場がないかもしれないという,恐怖の質を変えたことでスリルが生むことに成功している。謎がチープだとか,『鳥』を意識したなら分からないからこその恐怖こそがうんたらかんたらと言いたくなるかもしれないが,まんま『鳥』をやってもしょうがないし,恐怖の切替はうまいことストーリーにメリハリを与えていると好印象だった。


これまでショッキングなシーンのある映画をやってこなかった先生だけど,本当にいままでこういう映画をやってこなかったことが不思議に思えるくらい,えぐいシーンを見せてくる。

冒頭からいきなり髪留めを首に刺す女性が現れたかと思えば,予告でも流れてた工事現場の屋上から飛び降り自殺する連中など,ほんのちょっとのショッキングから始まり,その後も銃を使ったり死体がそこらかしこに転がっているシーンなど,異常なことが起こっていることを見せてくる。

それだけならまだ想像の範囲内におさまる無難?な自殺だが,動物のライオンに自分を食わせたり,近くにあった芝刈り機で自分を刈らせたりといった,どんなイマジネーションだよ,とつっこまずにはいられない斬新な自殺方法まで披露。それら斬新な自殺は,はっきり言ってあまりにチープすぎる映像でリアリティの欠片もあったもんじゃないんでシーン事態は怖くないんだが,こんな死に方思いつく先生のほうがよっぽどこえーよ,とその発想に恐怖を感じた。てか,これって明らかにメジャースタジオなんかじゃなく,インデペンデント系でやっとけと思ったのは自分だけだろうか。

また,ショッキングなシーンだけでなく,見える範囲を限定したところにカメラを置き,わざと人物が見え隠れさせたり,いかにも何か起きますって気配を漂わせるカットなど,嫌な想像力を働かせてしまういつものシャマランらしいカットも随所に見られる。で,そういういままでの先生らしさが見えたと思った瞬間に,いままでショッキングネタでびびらせてきたので油断してただろと言わんばかりに,典型的などっきりびっくりさせる恐怖を盛り込み,飽きさせないためにあの手この手を使ってくる。

他にも『サイン』で見せたようなユーモアが恐怖の合間に盛り込まれており,この貪欲さもまた,先生らしい。


先生のやりたいことが色々と詰め込まれていてはっきり言って大満足な出来だったわけだが,ただ,『ヴィレッジ』『レディ・イン・ザ・ウォーター』の2作に引き続き,役者の演技部分がだいぶチープ化しているのが気になる。

ウォールバーク兄さんはともかくとして,ヒロインの奥さんやシャマランムービーでは重要な役回りに位置する子役,伝染して自殺しようとする人々の演技にわざとらしさがあり,人間ドラマに主眼を置いていないとはいえ,この映画の弱点である人間ドラマに,さらなる打撃を与えてしまっている。

いままでは単に人選に恵まれていただけなのか,はたまた自分がラジー賞を受賞しちゃったことで役者に対する演技指導にやる気がそがれてしまったのか(今回のカメオは声だけだったし)は定かじゃないけど,脚本上は弱いものでも,そんな弱さをバネにいいものにしてしまう役者のパワーに恵まれたら,もう少し穏やかな評価がなされたんじゃないかなぁ。と,これからも先生にはほどよい大金で映画を撮ってもらいたい身としては,そんなことを無駄に思ってしまう。
posted by タク at 23:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>てか,これって明らかに
>メジャースタジオなんかじゃなく,
>インデペンデント系でやっとけと思ったのは
>自分だけだろうか。

本作は未見なのですが、以前からシャマランってB級映画を撮るべき監督なのに『シックス・センス』があたってしまったから過度な期待を背負ってしまっていると色んな人から言われてますよね

本作は評判がいいみたいなので見てみたいのですが、シャマランはひょっとしたら『シックス・センス』がヒットせずに低予算のB級映画を撮っていた方が幸せな人生だったのではと夢想しないこともないです
タクさんと逆の願望というか本当に夢想ですけど
Posted by もっぱら at 2008年08月20日 01:39
>もっぱらさん

B級映画を撮るべきというか,A級のような宣伝して,実際はB級ど真ん中な上に,ハリウッドらしくない作りですね,先生は。

シャマラン映画については,シャマランというだけで駄作とするアンチが結構いるとかいう真偽は定かじゃないけど,そんな噂も聞きます。そのせいもあって評価が相対的に落ちてしまっているのかな,という気も。


低予算をやり続けていたほうが幸せだったかも,というのにはかなり同意ですね。
ただ,そうだったら『アンブレイカブル』が出てこなかったかも,という気がしてしょうがないので,やっぱヒットして大金使えるようになったのはよかったと思ってますよ,個人的に。

てか,『アンブレイカブル2』作るまではヒットメイカーとして生き延びてほしいです,まじで。
Posted by タク at 2008年08月20日 22:02
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