2008年08月27日

[ライトノベル]断章のグリム[ なでしこ・上

童話を題材にした幻想新奇譚の新作。『人魚姫』で舞台となった海辺の町に訪れた蒼衣たちの前に,再び起こる悪夢。短編を挟んだ久しぶりの新作は,グロテクスの表現にさらなる磨きがかかっていた。

今回の<泡禍>の被害による死に方がかなりひどい。
これまでも,どうしたらここまで異常な死に方を描けるんだってくらいのグロテクスさがあったが,そのあまりの悲惨さに非現実的なものがあった。だけど今回は現実にありそうな死に方をさせ,その死に様や死後の悲惨な姿を勘弁してくださいってくらいにやたらに詳細に描いてくれたおかげで,あまり意識していない普段の生活でもこんなに怖くて悲惨なものになるんだということを認識,というよりも再認識させられた。

それと,雪乃の断章を使用するときの痛みの描写がかなりパワーアップしていた。
ここ最近直接的な痛みを感じるような描写をしてこなかったことや,多少痛みを感じるような表現があっても読み慣れていたので平気だったのに,カッターが手首の肉を切る感触や切った時の熱を帯びた痛み,骨にまで刃が達したときの感触,血が噴出す等等,やたらに生々しく,読んでいて久しぶりに立ちくらみしてしまうほどきつかった。
かなり気分の悪くなる描写だったけど,単なるグロ強化というには急な気もする。蒼衣に対して,彼がいるから大きな<泡禍>が発生するということに嫉妬や焦りといったものを感じているようだったので,そういった雪乃のマイナスの心理がこれまでで一番大きくなっているように感じるだけに,それに比例した形なのかもしれない。


これまでは,よほどのことがなければ誰でも知っていそうな有名な童話を題材にしていただけに,絵本にもなる馴染み深い童話が悲惨な怪奇現象になるという意外性や,童話から派生した物語,原点となる物語といったものを知っていくことで,知っていた童話の知らない一面を見られるという面白さがあった。そのため,『なでしこ』というマイナーな童話を題材にしたことで意外性というものはなくなったものの,あまり知られていない作品を掘り起こすという趣向ってラノベではあまり見ていないだけに,なかなか面白い試みだと感じた。あとがきでは,マイナーな童話を紹介するという形をまたやりたいみたいなことが書かれていたが,ぜひとも次を実現してほしいところだ。

上巻ということでまた続き物になるんだが,次が中になるのか下になるのか分からないが,過去の事件に遭った千恵の再登場としているのが今回とても気になる。『Missing』の時でも過去の事件に遭遇したサブキャラが再登場するということはなかったと記憶してるので,この再登場には意味があるのだろうか。あくまで蒼衣たちが海辺の町に来るきっかけでしかないのか,はたまた断章持ちになった彼女が物語のキーとなるのか等,どういう役回りに位置づけられているのかという点も楽しみにしたい。


断章のグリム 8 (8) (電撃文庫 こ 6-21)
甲田 学人
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posted by タク at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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