2008年09月13日

[ライトノベル]ツァラトゥストラへの階段3

マンネリを回避するためか,これまでとは違う趣向の囚人ゲームとなった3巻。1,2巻に出てきたヒロインも再登場したりと,一区切り的なストーリーになっていた。(=まだ書かれていない多くのネタはあるけど,一つの結末としてはすっきりさせたことで打ち切る準備万端って嫌な予感をさせるわけだが……)

今回題材となった囚人ゲームはRPGで,魔王に囚われたお姫様を,現実とゲーム機のキャラクターと一緒に冒険して救い出すというもの。

いままで閉鎖された空間で行われていた囚人ゲームがオープンな空間になったことで,シリーズというかこの作家の面白みの一つであるプレイヤーやパートナーとの裏の読み合い,裏切りにつぐ裏切りといった精神状態ギリギリでの人間関係が薄くなったかわりに,福原と今回のヒロイン"オリビア"への肉体的・精神的に追い込むという相変わらずのドSぶりが強化されていた。

オリビアのほうは,福原から送られてくる現実世界のデータを元に障害物を避け,敵データとなった人間を斬り続けないと,電流によるダメージを受ける1巻でのバベルと同じ方式。ゲーム世界を歩く・敵を切り続けることによる疲労と,電流によって痛めつけられる苦痛,その過酷さにめげないオリビアをさらに追い込む様は,まさに鬼畜。

福原のほうは,ゲーム機の世界に常に現実世界のデータを送り続けねばならず,これまで以上に扱うデータを多くすることで,処理能力をパンクさせようとするし,途中で囚人ゲームに参加する飛鳥も前回のカレン以上の強敵を相手にボロボロになったりと,終盤になるにつれて過酷さがスピードを上げていき,みんな痛々しすぎる。

今回のようにオープンな舞台で囚人ゲームを展開したことでマンネリを打破できたかといえば,そうとも言いがたい。普段何気なく暮らしている平和な世界が,一変して危険なものへと化けるというのは意外な着眼点だと思ったけど,福原を極限まで追い込むためのシチュエーションの一つにすぎず,それ以上のものがないってのがなんとも。
せめて,由紀がゲーム中に福原に干渉したことで,囚人ゲームがゲームとは関係ないものに対してなんらかの害を及ぼすということになっていればまだ面白みも生まれたんじゃないかと思うが,結局由紀を出すためのシーンにしかなっていなかったのは残念。

舞台をクローズ→オープンにしただけでなく,本編もあとがきもセクハラやおバカ率が上がっていたりと,エンターテイメント性が高く,オープンな環境をもっとうまく活かしたものがほしかった以外にはあまり不満がない。キャラクターの役割分担も実にうまいし,最後の"魔王"という作者なりの捻ったトラップなんか,実にいいアイディアだった。作中でもちょろっとラストの展開も含めた伏線がいくつも張られていたし,ちょっと唐突感はあったものの,いい騙しだったと思う。

パルスとのやりとりで,自分自身とは何か?という問い以外に,今後のことを考えてなのか,それとも囚人ゲームというものが何故存在するのかを説明する意味合いで出したのかは分からないけど,数年後にパルスをもった人間ともたない人間で戦争が起こるという大胆構想は一体どこへ向かおうとしているのか,ちょっと不安にさせる。この作品にはもっと閉じた世界,一個人の中で完結するものであるのがいいのであって,人類全面戦争みたいな風呂敷の広げ方は,題材にとっても作者にとっても地雷になりそうな気がするんだが,果たして今後のシリーズはどうなるのだろう(続刊がでるかも含めて)。


ツァラトゥストラへの階段 3 (3) (電撃文庫 と 8-6)
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posted by タク at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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