2008年09月21日

[ライトノベル]葉桜の来た夏2 星祭のロンド

前作が綺麗にまとまっていたので,この2巻が出たときは思わず「蛇足になるんじゃ…」と不安だったけど,アフターストーリーとして十分楽しめる内容だった。

人類とアポストリの友好関係をアピールするため,東京で開催されるフォーラムに招かれた学と葉桜。そんな二人の前に,学の父親と連絡させてほしいと願い出てきた少女・星野友深。その少女が,アポストリ専門のハンターを職としている女に狙われていたことから,学と葉桜は,星野と共に見知らぬ街で逃走劇をすることに……というお話。

今回のサブヒロインの星野という少女は,単体としてはあんまり魅力のないキャラクターだった。ボーイッシュで意地っ張りで生意気という設定はかなり魅力的なんだが,その魅力が活かされるのが,星野のことを気にかける学を見て嫉妬しまくりな葉桜とのやりとりくらいしかない。葉桜以外とは,ある過去によるトラウマが邪魔して,設定があんまり活きてないように感じた。

じゃあ,星野のトラウマというのがうまくストーリーに活かされたかといえば,NOな感じ。このトラウマがもたらした結果は,ストーリー展開を無駄に回りくどいものにするだけで,トラウマの真相もラストのほうでの会話で明かされる程度。学と星野が過去に一度出会っていたという過去エピソードはばっちり再生させたのに,このトラウマエピソードはそういうのがなかったため,話をややこしくするだけのステータスでしかなかったのは残念だった。

1巻で不満を抱いたアクションシーンが,今回は「星野という少女を付け狙うやつから逃げる」という理由によって無理なくストーリーに溶け込んでいる。ただし,あまりアポストリの超人的な能力を魅力的に描き出しているとは言いがたいけど。

人間とは思えない運動能力やら,アポストリを何人も狩ってきたであろう武器の数々,極度のドSぶりと,そんなハンターと直接やり合う時は,その実力に押されまくるあたりは,とても淡白で描かれるアクションに魅力は感じないが,その代わりに緊迫感はあった。特に,ハンターと星野の対決では,追い詰められた獲物とそれを狩るハンターという構図がうまく描かれており,獲物の最後の抵抗と絶望して助けを懇願するシーンは,他の魅力と動きがあまりないアクションシーンでもこれくらいうまく気合入れてやってくれないものか,と思う。

ハンターから一度逃げて逃走劇にはいると,恐ろしい相手に狙われているという緊迫感がまるでなく,見知らぬ街で迷子になってしまいました,という拍子抜けする展開になるのはいただけない。逃走劇なら逃走劇なりに,いつ襲われるか分からないという緊迫感を出してほしかった。逃走中にまさかビジネスホテルに悠々と宿泊するなど,余裕ありすぎてちょっと困る。

ラストで学と<秋(アウトウンノ)>の灯籠,二人の政の駆け引きはかなり読み応えたあって面白かった。学が灯籠と話す前にロジックがどうたらと言った時は不安だったけど,そのロジック展開は下手なトンデモ推理小説よりずっと論理的で,最初のほうは失笑しながら読んでいたのに,だんだんと真剣にのめり込んでいき,最後にはその場にいたキャラクターたちと共に「そういうオチか!」と感嘆した。
まぁ,高校2年で政に係わるようになってまだ2ヶ月でよくこんな駆け引きができたな,みたいなツッコミが浮かんだけど,そこはアクションの見せ場は葉桜にすべて持っていかれる主人公の唯一の見せ場として,政に対して成長したんだと思うことにしておこう。

2巻でかなり大きめな陰謀がうごめいていることをぼかしたけど,この広げられた風呂敷をどう畳むんだろうか。学と葉桜の関係の進展も含めて先が気になる。


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posted by タク at 14:12| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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