2008年10月23日

[cinema]イーグル・アイ

前半は現代テクノロジーが牙を剥くサスペンススリラーとして楽しめたが,後半からSFチックなものが出てきたことで空気が一変,唖然とする映画だった。

冒頭,米軍が中東の潜伏するテロリストの重要人物を暗殺,というか派手にミサイルで周囲にいた民間人ごと吹き飛ばすというシーンがあった。観に来たはずの映画とずいぶん違うシーンだったため,劇場を間違えて入ってしまったのかと思わずにはいられなかったが,その後タイトルが表示されたことでホッとした。このような映画のテーマとイメージがまったく繋がらないシーンが冒頭にあると,どうにも不安に感じるのは自分だけなんだろうか。

とにかく,そんなサスペンス・スリラーとどう関連するのかさっぱり分からないところからはじまり,その後も主人公の双子の兄の葬式や,ヒロインのほうも離婚だか別居中の旦那に息子を預けたりなど,意味があるのかないのかよく分からない展開が続く。
とはいえ,まったりとしてて少々退屈なシーンの中にも,主人公やヒロインの知らぬところで何かが動いていることを想像させるシーンを絡ませており,退屈なりにもそれらのシーンに散りばめられた不可解な点の意味を妄想させるようになっているのは,サスペンスものとしてはなかなか憎い演出だと思えた。もちろん,なぜ二人が巻き込まれたのかを明確にする伏線張りにもなっており,『ディスタービア』の監督だけあってそこはしっかりしている。

ちょっと退屈な前置きが終わると,主人公の口座に大金が入っていたり,部屋中に武器や爆発物が運びこまれてFBIに捕まるわ,どこから仕込まれたのか,突っ込んできた鉄骨によって開けられたビルの穴から脱走したりと,それまでのまったりした展開から急変。そこからは,あらゆる電子機器に介入して主人公とヒロインを監視・接触してくる謎の女性に翻弄され,FBIからの息つく暇もない逃走劇が展開されていく。

謎の存在に脅され,さらに国家権力に追われるというのはスリラー映画では使い古された感はあるけど,あらゆる電子機器を使って次から次へと逃走の指示をされたりと,現代なりのアレンジが加わることで新鮮さを感じるようになっており,さらに大作アクション映画もびっくりなカーチェイスが織り交ぜられたことで,他のスリラーにはない迫力が生まれ,思わず魅入ってしまった。

FBIの追撃を逃れた後は多少ゆったりとした展開になりつつも,それまで碌に交流しなかった主人公とヒロインの反発や,秘密裏であろう兵器開発場にすら介入できる謎の存在,主人公たち以外にも脅されて行動する人物が出てきたりと,謎が深まるばかり。さらに,冒頭であったテロリスト暗殺の報復でアメリカ人が殺されていくニュースも流れ,まさかテロリストにいるスーパーハッカーが何らかの陰謀のために主人公たちを利用しているのか?と思っていたら,まだ終盤でもないのに謎の女性と出会うことに。

一体どんなやつが出てくるのかとドキドキしつつも,あまりに早く出てくることに多少の不安を抱えていたら……出てきたのは無数の画面。なんだか嫌な予感が強くなっていったと思ったら,高度なAIを搭載したコンピュータでしたというオチ。

「ありのまま今起こったことを話すぜ」という台詞が思わず頭の中でよぎり,さよならスリラー,ようこそSFワールドへ,という感じでジャンルが急変。なんか構想した10年くらい前は,そのオチがSFすぎて現実感がないから実現しなかったみたいなことがパンフレットに書いてあったけど,これは今の時代でも十二分にSFっすよ。

それまでの驚異的な電子機器への介入と処理速度を考えると,確かに正体が人間であるよりコンピュータのほうが幾分現実的ではある。だがそうなると,一見綿密に計画を立てて行動しているように見えながら,実際は何も知らない人間を操るというめちゃくちゃ不確定要素を平然と盛り込み,結果行き当たりばったりな逃走劇もせざるを得ないなど,高性能のほこるコンピュータにしてはあまりに理論的じゃないことを平然をやっていることに違和感を感じた。

事件の首謀者の正体が明かされた後,それまで流されるままだった主人公が,自分の置かれた状況と自分の兄の死に何かしらの繋がりがあることを知ったときから自発的に真実に近づいていくようになり,いかにも陰謀ものの映画にありがちな展開が続いていく。それはそれでいいんだが,SFという言葉が刻まれたことでスリルと驚きがなくなってしまったことで,陰謀ものとしてもやや失速気味になってしまったのは残念。その裏で,ぎくしゃくしていた主人公とヒロインの人間関係にも協力者としてのドラマが展開されていたが,途中に2人の関係に波乱はあるものの,男女がともに行動していたらこうなるっていうちょっとベタな展開に落ち着いてしまったのも残念なところ。

前半がかなりよかっただけに,オチが明かされた中盤以降の展開にSFを持ってきてしまったのは,描きたかったテーマとしては仕方ないっちゃ仕方ないが,まだ現実味がないものだっただけにドンデモ展開だと感じてしまった。正直,現実感を覚えるにはちょっと時代の先を行き過ぎた感のある映画。それにしても,ここ最近のスピルバーグは,何かとSF入れたがる病にかかっているんじゃないだろうか。昔は,SFならSF映画としてきっちりまとめてたような気がしたんだが……。

そういや,いままでティーンエイジャーの役が多かったシャイア・ラブーフが今回大人の役をやったと言ってたけど,見た目はともかく,20代前半くらいでティーンに毛が生えた程度のキャラクターでしかなかったので,あまり大人という感じは出ておらず,ゆえに今までと変わりなく観ることができたんだが,あちらではあれが大人なんだろうか。違いがいまいち見出せなかった。

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原題:Eagle Eye
監督:D・J・カルーソ
脚本:ジョン・グレン,トラビス・アダム・ライト,ヒラリー・サイツ、ダン・マクダーモット
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ,エドワード・L・マクドネル
出演:シャイア・ラブーフ,ミシェル・モナハン,ビリー・ボブ・ソーントン
公式サイト:http://www.eagleeyemovie.com/intl/jp/
posted by タク at 22:29| Comment(0) | TrackBack(1) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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