2008年11月02日

[cinema]レッドクリフ PartT

三国志演義のうち「長坂の戦い」からタイトルにもなっている「赤壁の戦い」までを描いた壮大な2部作。ジョン・ウー監督らしい魅せるアクションもちゃんと用意されていて,後編に期待の持てる出来だった。

三国志は多分演義のほうを小・中学生くらいに読んだきりで細部をほとんど覚えてないため,どんだけ演義を忠実に再現してるかは分からない。その程度のにわか知識だったけど,そんなんでも支障もなく十二分に楽しめた。
一応,日本用に特別収録したっぽい曹操・劉備・孫権の3勢力の丁寧な説明が本編始まる前に流れるんだけど,その説明時の演出とかが正直センス疑う出来。本編観る限り,本編に直接係わったスタッフというより日本側スポンサーのスタッフがやったと見受けるが,説明は嬉しいけどセンスもないのに変に凝った演出はやめたほうがいいと思ったぞっと。

本編のほうは文句のつけようがない面白さ。映画冒頭の「長坂の戦い」から,集団戦では画面がごちゃごちゃになるようなシーンは極力出さずに孔明の計略で曹操軍を翻弄する様を描き,乱戦になったところでは趙雲や関羽ら英雄たちが一人で多数の兵を相手に華麗なアクションで次々となぎ倒していく無双劇で魅せ,うまく多と個を使い分けていた。
この演出はPartTのクライマックスに描かれる「赤壁の戦い」の前哨戦でも同様にあり,趙雲と関羽,周瑜や映画オリジナルキャラの甘興らかっこよく敵を倒していくアクションがあった。さらに,張飛の無双劇もあるんだけど,これはかっこいいというより笑える。なんせ槍を持った相手に武器も持たず,野獣さならが吼えながら突進して吹き飛ばしていくというギャグをやってのける。騎馬兵も,戦場で馬相手にタックルかましてくるやつがいるとは思わなかっただろうなぁ。ほんと笑えた。

アクション以外の部分では,孔明と周瑜を中心に劉備・孫権の同盟軍を築くシーンが主となって描かれているんだけど,この2人以外の人物については,切り取ったエピソード上仕方ないとはいえ,そのほとんどがいまひとつ影が薄いのがちょっと気にかかった。
子馬の出産シーン,孔明と周瑜が心を通わせ美しい音楽も印象的だった琴のシーン,そして孫権が立ち上がるまでの葛藤と決断。2つの勢力が曹操という巨大な敵を前に「友」として同盟を結ぶまでの流れは,個々のエピソード中にうまく心理の流れが描かれていたし,映像と音楽が美しかったので見応えもあった。
説得される側の孫権や周瑜の妻はまだ印象深いシーンもあっていいのだが,それ以外に人間ドラマ的な演出がほとんどない。「どんな困難にも友と立ち向かえば乗り越えられる」ってテーマがあるなら,二人以外にもう少し友情を分かち合うエピソードがあってもよかったんじゃないかと思う。ただ,戦場で周瑜が趙雲を助けるという,言葉ではなく(体を張った)行動があったりしてたので,男同士の友情ならグダグダ会話するより戦いの中で友を守り,助け合ったほうが燃えるだろ,という少年漫画的発想があるのかもしれない。それならそれで,そっちのほうが好みなので納得するところ。
ただ,アクションで見せ場が用意されている英雄たちはともかく,主に人徳と政と草鞋編みで生計を立てている劉備の影の薄すぎるのはどうしたものか。政は孔明に任せちゃうし,アクションも戦略立ても出番なしで空気キャラと化してしまっている。オリキャラの甘興ですらアクションシーンがある分存在感があるだけに,ちょっと切なくなってしまった。

全編に渡ってシリアスなシーンが多いけど,多少なりとも楽しいユーモアも盛り込まれている。
先に書いた張飛のアクションシーンもそうだが,孫権の妹がなかなか楽しいことをやってくれる娘で,戦場に自分も出ると言い出した時には,女子供とバカにする孫権側の軍師の馬のつぼを叩いて転倒させ,他の馬が逃げ出したり,酒の場で劉備の妻に云々という話が出てきて先の馬の件同様劉備を失神させたりと,作品全体の雰囲気を損なわない程度にちょっとしたドタバタ劇を披露して緊張で張り詰めた空気を和ましてくれる。

アクション・ドラマ・ユーモアと,なかなかバランスよく配分されており,2時間30分と長時間だった上に一番の見せ場である「赤壁の戦い」はPartUにおあずけにも係わらず,だれることなく楽しむことができた。上記で書いていないが,曹操の悪役ぶりは倒すべき強敵というシンボルにふさわしい存在感があり,ますますこの戦いの行く末を見守るのが楽しみ。来年4月と,あと半年もあるのが恨めしい限りだ。

あ,あと,この手の前後編に分けた作品よろしくエンドロール後にPartUの予告が流れるのだが,エンドロール前にPartUの予告があります!って字幕予告が出てきて思わず吹きそうになった。今まで前後編の映画を何本も観てきたが,こんな露骨にエンドロール後の予告を宣伝するのは初めて観た。なんつーか,そのあまりの必死さにギャグなのかと思うほど。スポンサーの社運がかかってるのかもしれないが,オープニングの件といい,娯楽なんだからもう少し肩の力を抜いたほうがいいんじゃないかと思うんだがなぁ。

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原題:赤壁
監督:ジョン・ウー
脚本:ジョン・ウー,カン・チャン,コー・ジェン,ジン・ハーユ
出演:トニー・レオン,金城武,チャン・フォンイー,チャン・チェン,ビッキー・チャオ,フー・ジュン,リン・チーリン
公式サイト:http://redcliff.jp/
posted by タク at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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