2008年11月08日

[ライトノベル]烙印の紋章U

前作から半年,剣闘士オルバが一国の皇太子と入れ替わって英雄となるまでを描いたファンタジーの2巻がようやく登場。

前作で皇太子ギル・メフィウスと入れ替わり,初陣を勝利で飾ったオルバ。皇太子としての日常を送る彼が,復讐を誓った相手オーバリーがメフィウス国内に蠢く内乱計画に加担していることを知り,2つの顔を使い分けて内乱を阻止するという,いかにも王道な英雄譚のエピソードとなっている。

今回も剣闘士オルバの活躍はふんだんに盛り込まれている。互いの武器で殺しあうシーンはもちろんのこと,獰猛な竜に乗って戦う騎竜戦は,オルバの芝居もあったとはいえ一歩間違えば殺されるという緊張感が強い戦いだったし,前作のリュカオンに負けない宿敵パーシルとの戦いではアクションだけでなく,『レギオン』を彷彿とさせる精神面も描かれたりと,一つ一つに特徴のある戦いが展開され,読み応えたっぷりでとても面白かった。

反乱を阻止するための立ち回りについても,反乱の気配を察知するところから剣闘士たちのグループに潜りこみ,一芝居うって信用を得て計画を暴くところまでが緻密に描かれており,所謂ご都合主義というものが見られなかったのはよかった。

キャラクターのほうは,オルバとヒロインのビリーナの関係がかなり面白くなっている。

皇族として生きるビリーナと,皇族になりながらも貴族を恨むオルバ。前作では,互いの立場の違いからくる価値観によって衝突を繰り返しつつも,最後には共闘し,助け合ったものの,主人公とヒロインという関係としてはいまひとつ弱い印象があった。

今回も同様に衝突を繰り返すのだが,オルバの目覚しい活躍によって印象を変え,彼のことをもっと知って互いに歩もうと努力するビリーナと,己の目的を達成するために孤高になりながらも,剣闘士のオルバとしてビリーナと接したことで彼女の孤独と葛藤を知り,徐々に彼女を守るべき存在として意識しはじめたオルバ。ラストには,孤独に生きてきた2人の少年少女の中で互いが大きな存在になりつつあることを垣間見ることができ,思わず胸がジーンとしてしまった。
ただ,まだ多少2人のぶつかり合い,心のさらけ出しあいが足りない感はある。同レーベルでジャンルもかぶる『獅子の玉座<レギウス>』がこの辺うまいだけに,それに刺激されてその辺のエピソードも強化されることを期待したい。

それ以外のキャラクターについては,武のパーシルと知のノウェ,道化のザットといった今回オルバと対立する面々がなぜ反乱を計画し行動したのかを,細かいエピソードを積み重ねることで納得のいく形で描いていたが,前作で活躍した剣闘士仲間やオルバを皇太子に仕立て上げた張本人の影が薄くなってしまっているのが残念なところ。
ただし,メフィウス国王グールや義妹のイネーリといった前作ではちょい役程度だった人物たちにはだいぶスポットが当たっているのはよかった。特にイネーリは,オルバに対する過剰なまでの固執があって,今後この固執がどのような形となるのか。グールのほうも真意の見えない行動が多く,オルバにどのような障害となって立ちふさがるのか。この皇族2人の今後の展開が非常に楽しみ。

地味な作品な上に決してキャラクター主体ではないだけに続編が出るか不安だったけど,前作と違って今後もシリーズの展開がありそうな終わり方をしていたので,次も出そうな予感。オルバの英雄としての道,ビリーナとの関係,兄や母,幼馴染を見つけ出し,復讐を遂げることができるのか。続くの確定なら,これらをきっちりかっちり後悔のない形で完結してほしい。

烙印の紋章 2 (2) (電撃文庫 す 3-16)
杉原 智則
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posted by タク at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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