2008年12月06日

[cinema]1408号室

スティーブン・キング原作で恐怖という言葉が謳い文句に出てくると,お約束のように醜くいクリーチャーがセットでついてくるけど,この作品はクリーチャーを出さずに恐怖を演出する作品だった。

ニューヨークにあるドルフィンホテル。そのホテルの1408号室では,宿泊した客は変死または自殺するという。「1408号室に入るな」という手紙を受け取ったオカルト作家のマイクは,好奇心と本のネタのため,1408号室に宿泊するのだが……。

キング原作の映画としては珍しくクリーチャーは出てこないし,変死や自殺者の写真以外にはグロテクスな描写もない。恐怖の主は古典的とも言える心霊というか,悪魔憑きの人間ならぬ部屋。この部屋が一体どこからどのような方法でマイクを殺そうとしてくるのか,緊張感溢れるハラハラドキドキな恐怖の展開が上映時間いっぱいまで満ち溢れており,比較的短い上映時間だったのにすごく疲れたというか,とにかく密度が濃い。

それにしても,日本や西洋系のホラー作品の大半は,分かりやすく霊や化け物が主人公やその仲間たちを物理的に殺そうとしてくるけど,この作品の悪魔の部屋は,事故死を誘発させるか,自殺させるために陰気な嫌がらせをするか,というひどく遠まわしなことをしてくる。

部屋の中では,何度か幽霊と思しきものが襲ってくることがあったけど,結局はマイクを精神的におかしくするところで踏みとどまり,直接手を下したほうが早いのに,相手が狂って自ら命を絶つ光景をまるで娯楽として楽しむかの如きその回りくどさに,最初は「陰気すぎる(笑)」と思わず笑ってしまった。

だが,どんな嫌がらせも何度も続けば人を狂わせるには十分なもので,最初こそタフだったマイクも,徐々に死への恐怖から死に物狂いになり始めていく。窓から部屋を出ようとすれば異次元にでも飛ばされたのか,他の客室は消滅し,扉を開けようとすれば質の悪いことにドアノブが壊れ,天井裏から抜け出そうとすれば,他の部屋が見えたと思ったら過去の自分と家族が見えたなど,どうやっても抜け出せない状況。

さらには,どんだけ嫌がらせをしても自殺はおろか事故死すらしないマイクに対し,最後の手段とばかりに,一時の希望を見せた後に絶望の底に叩き込むということまでやってくる。その一時の希望のシーンで,一見無意味そうに見えた序盤でのいくつかのシーンに繋がるところがあり,本なら残りページ数でブラフだと分かるようなことでも,映画ならあと何分で終わるかをわざわざ確認しない限りはうまく騙されてしまいそうなやり口があった。

実際,観ていた時はあまりに都合のよすぎるオチだったので絶対罠だと思っていたのに,その希望があまりに長くやっていたので「あれ?もう終わりなの?」と騙されそうになったところでマイク共々一気に落としてきて,さらなる絶望を駄目押しとばかりに放ってきたときには,いい意味で「ふざけんなー」って叫びそうになった。

そこまでして死を望みながらも直接手を下そうとしない徹底したやり口は,まさに悪魔というにふさわしい。嫌がらせのバリエーションは決して目新しくもバリエーションにも富んではいないけど,それでも観ているこちらに恐怖を与えるインパクトは十二分にあった。

そういや,この悪魔の部屋はゲームなのか,それとも絶対死なせる自信またはプライドでもあるのか,死へのロード開始から1時間カウントするという茶目っ気もあったりする。で,これはネタバレになるが,1時間耐え抜いたら抜け出せるのかと思いきや,また1時間のカウントが始まるという,あまりの緊張の連続に観ていた時は笑うことすらできなかったが,今思うとそのカウント意味ないじゃん,というつっこまずにはいられないネタがあり,もっと余裕をもっていたら(心の中だけど)つっこめたのに!と悔しい思いも。

結局のところ,あの部屋には一体何があって悪魔の部屋になったのか,1408以外にも足したら13になる部屋なんていくらでもあるのに,なぜ1408号室なのか,といった謎の全ては一切明かされず,ただそういう部屋だという設定に踏みとどまっている。多少気にはなるけど,下手に種明かしして恐怖が陳腐になるより,謎は謎のままのほうがいいときもあると思っているので,明かされずに終わったのはあり。

何かとクリーチャーで恐怖ネタを済ませてがっかりすることが多かったキング原作映画にあって,クリーチャーは出てきたけど人間がもたらす恐怖を描いた『ミスト』といい,『1408号室』といい,ようやく面白いキング原作映画が出てくる土壌が出来てきたように感じられ,今後出てくるだろう作品にも質向上を期待したくなってしまった。

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原題:1408
監督:ミカエル・ハフストローム
原作:スティーブン・キング
脚本:マット・グリーンバーグ,スコット・アレクサンダー,ラリー・カラゼウスキー
出演:ジョン・キューザック,サミュエル・L・ジャクソン
公式サイト:http://room1408.jp/
ラベル:映画 ホラー
posted by タク at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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