2009年01月10日

[ライトノベル]静野さんとこの蒼緋

学園コメディにありがちな破天荒な設定のキャラクターが揃っていたけど,設定に見合った活躍というかはじけ方をしておらず,コメディとしてはとても中途半端な出来だった。

前作『君のための物語』でデビュー,そのライトノベルでは珍しいタイプの作風や新人とは思えない文章表現がとても魅力的だったので,この作家さんの次回作を心待ちにしていただけに,学園コメディというジャンルでも期待感はあったのだが,ちょっと過剰だったみたい。

まず冒頭の主人公の蒼介とその双子の妹・緋美子が初対面するシーンからして違和感があった。このシーンは,普段から蒼介が父親の優太郎の策士ぶりに引っ掻き回されているところを連想させるとこなんだが,正直なんで蒼介が優太郎を意地の悪い父親だと評するのかが分からない。確かに多少の悪戯心があるのは窺えるけど,激怒するほどのインパクトもなく,その後の優太郎の言動を読んでいっても,なんだか数センチのヘビに出会ったのに,人に話すときは数メートルの大蛇に遭遇したと事実を誇張している,そんな印象だった。

ついで言えば,優太郎に対する蒼介の心の中で呟かれるツッコミもキレがいまひとつ。まぁ父親に対してだけでなく,その後の学園生活でも同じようにツッコミ方が弱いと感じることが多々あったので,ほぼ唯一と言っていいツッコミキャラとしては完全にダメなタイプだと感じた。

その他にも,蒼介が半ば強引に所属させられている科学部の部員連中も曲者揃いのわりにはぶっ飛んだ活躍をするやつがいない。学園一の変人で傍若無人な部長やら,どこからともなく現れる幽霊のような先輩,良く言えば天心万欄,悪く言えばただの天然バカな後輩と,基本はばっちり抑えているはずなのに,この科学部ネタで唯一笑えるところが,部長が緋美子にボッコにされるところくらい。個々の個性を活かした場面もあまりなく,もっとこいつらを動かせば面白くなったんじゃないかと思うだけにとても残念。

よくよく考えてみると,あんまりぶっ飛んだことをやりすぎて読者をひかせちゃまずいんじゃないかと思ってブレーキかけたように感じる。そんくらい中途半端。もしブレーキかけてたなら,設定も同じくらいブレーキかけとけと言いたい。いくら設定にインパクトがあったって,それを活かした場面がなければ意味はないんだし。

ストーリーの中身は意外性があまりなく,とある事件を通じて,最初はいがみ合っていた双子が徐々に仲良くなっていくその第一歩を歩めました,めでたしめでたしってところか。優太郎や緋美子の思わせぶりな会話から,この作品の秘密ポイントだったんじゃないかと思われる緋美子が魔法使いだという設定は表紙で既にモロバレだったし,そのせいで緋美子だけでなく静野家みんなが魔法使いだったというネタバレがきても,悲しいかなインパクト不足。

まぁ,魔法使いってことを表紙からも完全に隠していたらいたで,ただの学園コメディだと思っていたところに魔法っていうファンタジーを持ってこられたら戸惑うんで,多分魔法使いって設定自体が無理あったんじゃないかなって思うことにしておこう。実際,この設定が本当に必要だったのか,甚だ疑問だし。

てなわけで,とにかく奇抜な設定やコメディをやるなら,もっと羞恥心をなくして挑むべしってことを改めて実感した。


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posted by タク at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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