2009年01月17日

[ライトノベル]プシュケの涙

夏休みで人気のない校舎。そこで起こった吉野彼方という少女の自殺。彼女は何故自殺したのか,その真相を解明するミステリー小説かと思って手に取ったが,実態は青春小説だった。

2つの章で構成されており,前半が吉野彼方の自殺の真相を解明するパート,後半では彼女がどういう為人でどういった背景を持った人物なのかを,前半パートの主人公の一人・由良彼方との出逢いから死の直前までの彼女の行動から語るパートになっている。

キャラクターの描き方は結構好みだった。主人公の一人・榎戸川は優等生だけど優柔不断なタイプなんで好きになれなかったが,由良のほうはチャラいけど変人という属性がコーティングされたことで三枚目キャラとして面白い言動で笑わせてくれるし,ある一点で一途というか真面目だという点も好感度高し。ある意味この物語の真の主人公である吉野は,彼女の心の声に共感できる点が多くあったためか,感情移入しやすいキャラクターだった。

ストーリーのほうはというと,前半パートには一応推理シーンがあったり,どっかの死のノートみたいな駆け引きがあってミステリーっぽい様相はしてるけど,そっちはおまけ程度の描写。そもそも,吉野の死に複雑な理由があるわけでもなく,何かとんでもない秘密があるわけでもなく,死の真相があまりにバカバカすぎて泣けてくる。

ただ,そのバカバカしい真相が後半パートの物語を経ることで,吉野彼方という少女に対し,運もない不幸なヒロインであったという印象を強くさせる演出になっている。

別の女を作って家庭を崩壊させ,離婚した後も金をせびってくるろくでなしの実父から,心労から倒れてしまった母親を守るため,誰にも悩みを打ち明けることもできず孤独に暮らすという,悲劇のヒロインのテンプレのようなキャラクターである吉野。そんな悲劇のヒロインである彼女が,ようやく悩みを打ち明けることのできる人を見つけたことで少しは運が向いてきたと思った矢先の死だったことが分かる。

この手の悲劇のヒロインは,ようやく幸せになるかもしれないというところで死ぬというのも古典的な感じではあるけど,それらと比べて彼女の死の真相は救いようのないくだらないものであるため,「あんなくだらない真相で死ぬなんて……かわいそすぎだろ」と,彼女に感情移入もしていたため,割とマジでもっとまともな死(いや,ほんとは死なせてほしくないけど)を与えてやってほしかったと思う。


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posted by タク at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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