2009年01月24日

[ライトノベル]空ろの箱と零のマリア

3月2日という中途半端な時期に転校してきた美少女・音無彩矢。彼女の"宣戦布告"によって日常を壊されてしまった星野一輝。3月2日という"日常"をループする「拒絶された教室」。多くの謎を散りばめつつ,ループする"日常"を巧みに組み替えながら真相に迫っていく手法がとても面白かった。

時系列を順に追うのではなくバラバラにしたり遡りながら語る作品,ループしながらも徐々に変化を見せていく世界を描いた作品。これらテーマを扱った作品はごまんとあるけど,組み合わせた作品ってのはありそうで今までお目にかかったことがなかった。

よくよく考えてみれば,同じ時をループしているというだけで,ループ世界にも○回目という時系列が存在するわけで,この組み合わせにインパクトはなかった。だけど,この作品の語り方がうまかったこともあるけど,ループによって変化する日常の一コマを切り取り,バラバラにした状態で無造作だけど意味のある並べ方をして語るというのは一つの時系列をバラバラにした作品とはまた違う味わいがある。

ループする世界を描いた作品の面白いところは,必ず同じことが繰り返されるのではなく,徐々に変化していくところにある。時系列をバラバラにして語る手法は,今日起こった出来事は何故起こったのかを昨日に時間を戻すことで明らかにしていくことで,解答の後に設問が出てくるというところが面白い点。この2つの特性を考えると,何故今まで同じような作品がなかった,ないし出くわさなかったのかが不思議なくらい相性ばっちり。これだけでもこの本を手に取った価値は十分あったな,と思う。

それだけでなく,この「拒絶された教室」が何故存在するのか,その真相が明らかになるにつれてストーリーに悲劇的な展開を入れて絶望させつつも,最後の最後でハッピーエンドに仕立て上げる隙のなさ。ループする世界で壊されていく心と,そんな壊れた心になって忘れようとしてもどうしても忘れられない"恋"が語られるシーンは,涙なしには読めないくらい切なく描かれている。ほんと,ハッピーエンドで終わってよかったと心から思った。

散りばめられた謎というか伏線の回収の仕方もうまく,何故音無彩矢が一輝に宣戦布告をしたのかとか,イレギュラーであるはずの彼女が「拒絶された教室」にもぐりこめたのかとか,一度読み終わった時は不可解さや無理やり感を感じたけど,もう一度読み返してみると,これまた隙らしい隙のない納得のいく理由がきちんと語られており,ずいぶん練られているんだな,と感心しきっきり。

まだ多少の謎,というか続編も視野にいれた謎が残されているので続編に期待したいけど,その反面,同じことを繰り返されてもつまらないというのもあるけど,今回と同じ手法は作品の性質上無理っぽいので,一体どういう続編が出てくるのか,というのが不安でもあったり。でも,そんな不安を吹っ飛ばすだけの作品が出てくるんじゃないか,そんなちょっと過度な期待も。はたして続編は出てくるのだろうか。


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posted by タク at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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