2009年01月29日

[ライトノベル]付喪堂骨董店5―“不思議”取り扱います

不思議な力を持つ"アンティーク"にまつわるエピソードを描いたシリーズも,ついに5巻目。今回もいつもどおり4編の物語を収録してたけど,最後の刻也と咲のすれ違いエピソード以外は微妙な感じだった。


幸運

身に着けることで幸運がめぐってくるという「幸運を呼ぶバングル」。そのアンティークを手にしてから幸運になったというブログを見つけた刻也たちが,持ち主を探し出すお話。

いつものミステリ率が高い章だけど,今回のトリックはあまり好みじゃなかった。

「幸運を呼ぶバングル」とやらは,未来の幸運を前借りしたり,幸運を分け与える代償でより大きい幸運を手にしたり,他人から幸運を奪うなど,同じアンティークでもその能力が違うという話になっていたので,アンティークを持っていると思われる人物と,ブログに書かれた内容から推測されるアンティークの能力にギャップがあったので,恐らくアンティークが2つ存在するのだろうとは最初から分かっていた。

だけど,2つのアンティークが存在していたのと同時に,2人の人物,双子の姉妹が別々のアンティークを持っていたというオチだったのには驚いたというより,この手のそっくりさんを使ったトリックにはどうも安易なものを感じてしまうので,ちょっと引いた。

このお話でアンティークを集めている不思議な少年と少女が出てきたが,今後何かしら刻也たちと接触があったりするんだろうか。彼らの存在が,今後の展開に影響があるのかが気になるところ。


希望

世界のありとあらゆる悪意が封じられているという「災厄の壷」を仕入れてきた都和子さん。んでもって,今回もそのアンティークに巻き込まれ,アンティークにまつわる過去の出来事を解き明かす,とある神話をモチーフにしたお話。

世界の悪意を身篭り,悪意を集め産み落とした闇子を壷に封じる役目を担う巫女たちがいる社会。巫女の一人である女性が,街で偶然見かけた出産の場に立ち会ったことで,赤子という存在を,子供を産むという女性の幸せを知ってしまい,恨むべき悪意の子を愛してしまった,という流れ。

この巫女という職業に就いた女性たちがどういう私生活を送っているのかは,作中の描写からは読み取れなかったけど,少なくとも神殿の中で純粋培養されてるわけではなく,普通に街に繰り出すこともできることから,出産という概念を知らなかったというところにすごく違和感を覚えた。そして,出産という女性としての幸せ(というのもイマドキ古臭い考えな気がするけど)を知ってしまったために,悪意の子を愛情を抱いたというのがどうにも解せなかった。

まぁ,元々心根が優しい娘であったことや,出産に立ち会う前にもお腹の子に対して微妙に優しさを見せていたことから,たとえどんな子であろうと愛情を抱く素質があったとも言えるが,それならそれで,悪意の子を産み落とすまでの間に,愛情と恨みが混在することによる戸惑いを描写してほしかった。


言葉

二章の「希望」から続くお話。「災厄の壷」に取り込まれたものの,壷に隠された真実をすべて忘れることを条件に外に出られるようになったものの,真実を捨てきれない想いによって壷の中に留まってしまった刻也と咲が,二章とは別の過去を見ることになる。

どちらも壷に隠されたある事実を語るお話で,二章が母の物語なら三章は子の物語になっている。

元々壷にまつわる文献には2度悪意が解き放たれたということから話を広げる余地はあったんだけど,完全な続きものだったということもあって,なんか蛇足な語りだと感じた。話の内容もあまり面白いわけでもなく,むしろ二章で壷の中に取り込まれることを選んだ巫女が,自分の子を姉に託し,姉も了承したというのに,その姉が育児放棄していたという要らぬ事実を知ることになるとは……。別に欝というわけではないけど,そんな後日談はいらぬわ,と思った。


本音

刻也と咲の夫婦漫才のようなすれ違いネタ。今回は,安いバイト代からお互いの服を選び,どちらがセンスがいいかを競うことになってしまったというお話。

4巻でそろそろ二人の仲も進展してほしいと思ったけど,結局進展らしい進展は見せず。そこは残念だったけど,咲の,服(というか黒)に対するセンスの良さやこだわりを見せたことが,いままで見せてきた彼女の思考とは別に,嗜好も知ることができ,無表情キャラであるはずの彼女にまた一つ魅力的なものを感じることができたのはとても良かった。

また,対照的にセンスのない刻也が選んだ服(実際には黒幕がいたんだけど)に対する咲のツッコミにセンスのよさを感じたのと同時に,某大ヒット漫画の終盤でキャラクターから「どう考えてもコピー」とつっこまれてたのを思い出し,ツッコミの内容とともに大いに笑えた。

それにしても,この2人の関係は果たしてどういう方向にもっていかれるんだろうか。最初は恋愛関係に発展するのかと思ってたけど,咲が自分以外の友人(女子ではなく男子で)と楽しくしている刻也を見て傷ついていたり,なんだか寂しがりな妹とか,もう恋人とかを飛び越えて家族に抱く感情に近いものを感じてしまったんだが。この先,一体どう発展していくだろう。


付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
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posted by タク at 01:07| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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