2009年02月05日

[cinema]誰も守ってくれない

殺人容疑として家族が逮捕されたことで,犯罪者の妹となった少女。その少女を世間の制裁から守る警察官の視点で描かれた社会派ドラマ。

海外の映画祭でも賞を取っていたりと前評判が高かったので期待して観たのだが,視点に偏りがあったり,今の社会でこれはどう考えてもありえねーよ,とか,細かいツッコミ所が満載ではなったけど,概ね期待通りの面白さだった。

映画冒頭での,リベラの美しい歌声をバックに兄が逮捕されるまでと妹の学生生活から逮捕を知る瞬間までのシーンは圧巻。普通に学校に通って同級生と笑いあう,そんな見慣れた光景が壊れた瞬間の絶望が役者の表情だけで伝わってきて,これは相当期待できると確信できるものがあった。

そんな傑作を予感させるオープニングの後はツッコミ所が満載。
犯罪者家族に対する過熱報道やバッシングはともかく,犯罪者の妹からコメントを取るために警察相手にカーチェイスしたり,新聞記者が警察にむかって「犯罪者の家族は死ねばいい」と真顔で言ったあたりは,マスゴミはやっぱりヤクザだな,と思った。
だけど,そんなマスゴミの後に登場してくるネット住民たちの制裁ぶりはマスゴミより身近なだけに違和感を感じるほどひどい。犯人の身元特定はともかく,妹の隠れ場所を特定して足を運んだり,石を投げつけたり,妹の姿をネットで実況中継したりといった確実に犯罪行為だろっていうアクティブさは怖かったが,さすがにこんなアクティブなやつはいねーよ,と思わずにはいられない。

だが,つい数年前なら考えられないようなおバカな連中がニュースを騒がしているのを見ると,絶対ありえないと断言できないのも正直なところ。この映画では,マスゴミもネット住民にしても,やりすぎに対する批判の視点が一切なく,タイトルどおり攻撃ばかりで誰も守ってくれない。
誰も守ってくれない,というか誰も止めようとしないと,悪意はどんどんエスカレートしていき,やがては加減を知らないバカがこの映画のような行為を仕出かす日もありえるんじゃないか,そんな風に思わせるだけのものは感じ取れた。

ストーリー展開やシチュエーションにはツッコミ所満載でありながらも,役者たちは実力派を揃えているだけに,演じられたキャラクターたちは実に魅力的。特に志田未来演じる犯罪者の妹は,中学生という年齢もあってむかつくこともしてくれたけど,理不尽な現状に対する悲痛な叫びは胸が痛くなる思いがしたし,佐藤演じる主人公との父娘のような関係を見事に演じきっていて,初めてこの子観たけど,若いのにこんな役者がいたんだなぁ,と関心。

ただ,人間関係については映画単品で観るとちょっと分かりにくいところがあるのが玉に瑕。佐藤と志田の関係はきっちり描かれており,ラストでの二人のやりとりには台詞の重さも含めて心に残るものがあったが,それ以外は映画公開と同時に放映されたドラマも観ていないと分からない点が……。松田龍平演じる後輩刑事と主人公のやりとりは面白かったけど,そんな面白漫才以外は特に二人の関係が見えてこない。ドラマと連動していたので気づかなかったのか,映画単品では描けてなかったからドラマが出てきたのか,鶏が先か卵が先かは分からないが,一つの作品として描けないのなら極端に出番をなくすか,いっそ出さないという選択をするべきじゃなかったかと思う。

犯罪者の家族がどう世間に扱われるかを真剣に考えたいなら,ちょっと前に映画化もした『手紙』のほうがのリアリティがあるし,描いてるテーマの重さも伝わってくるし,ネットの悪意をエンターテイメントとして仕上げたという点でも,『ブラックサイト』のほうがぶっ飛んでて面白い。どこぞにも書いてあったけど,社会派ドラマの入門書的な位置づけとして,あまりうるさく言わない程度に楽しむのが一番な映画なんだと思う。

公式サイト
タグ:映画 ドラマ
posted by タク at 23:59| Comment(1) | TrackBack(0) | 2009年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。


初コメになります。

昨夜徹夜したので、今日はオフにしました。

一才の娘に邪魔されながら、見てます。(^^)

また、ゆっくり寄らせていただきます。

では失礼します。
Posted by ☆KEEP BLUE☆ at 2009年02月06日 19:16
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