2009年02月10日

[ライトノベル]パララバ

今年も電撃小説大賞受賞作が出てくる季節がきた!
ということで,まずは大賞よりも面白いケースが多い金賞受賞作の『パララバ』から読んでみたが,読者側が読んでて恥ずかしくなるくらい青春したラブストーリーにしたほうがいいんじゃないか,って作品だった。

友達以上恋人未満,毎日電話で会話するだけの関係で,お互い会ったこともなかった遠野綾と村瀬一哉。いつかは逢おうと思っていてもなかなか一歩が踏み出せずにいた二人に,突如訪れた一哉の事故死。だが,彼の死に落ち込んでいた綾の携帯に,死んだはずの一哉からの電話がきたことから甘酸っぱいパラレル・ラブストーリーが始まる……かと思ったら,一哉が生きてる世界では綾が死んでいたことから,お互いの死に不信感を抱き,死の真相をめぐるミステリー要素を混じった作品になっていた。

並行世界,時間を越えた人との交流をテーマにした作品は結構あって,読む前は恋人になれたかもしれない二人がお互いの気持ちを整理して別々の道を歩んでいく切ない青春ラブストーリーを期待していたのだが,それはいい意味……ではなく悪い意味で裏切られたかな,って印象。

綾と一哉のやりとりには,青春物特有の気恥ずかしいやりとりもあるし,綾が何かと発狂するシーンがあって笑えるところもあったりと面白いところがいくつもあった。サブキャラとして登場するラメルさんというキャラクターもかなり癖のある性格をしており,ちょっと男勝りな点も含めて面白い人だし,綾の周囲にいる友人たちも出番は少ないけど物語の鍵になるうまい配置をしており,キャラクター作りと役割分担がうまいと思った。
ストーリー運びも,学校で流行っているというものや下駄箱の位置を間違えやすいなど一見意味のなさそうな日常描写が真相に迫る伏線になっているなど,徐々にピースが集まっていき,一つのパズルが作り上げられていく過程は,金賞受賞とはいえ新人作家が書いたものとは思えないほど。

ただ困ったことに,王道のラブストーリーにたいして変化球として取り入れられたミステリー部分の大詰めでケチがついてしまっている。
綾と一哉の行動はあまりに探偵"ごっこ"すぎたものの,構成のうまさのほうが目立っていたのでまだ許容できたのだが,2人が真相に辿り着いた後,お互い相談もせずに1人で犯人たちと対面しにいったところで,"ごっこ"遊びだったんだとつくづく痛感させられて一気に興醒め。いくら犯人が顔見知りとはいえ,もう一つの世界では自分を殺した相手だということも忘れて危険をまるで考えない行動を取り,挙句に殺されそうになるという展開は,安物の2時間ドラマすぎて,ここに至るまでの技巧が台無し。

もしかしたら,後先考えずに行動して安っぽい危機に陥るほうが現実的な高校生,というか若さなのかもしれんが,たとえ非現実的であっても所詮フィクションなんだから,フィクションなりの綺麗さを,協力しあってスマートな解決にもっていくこともできたんじゃないかと思う。いや,むしろそうあってくれたほうが,もう二度と出逢えない2人の最後の手向けになったんじゃないか。そう思うと最後は惜しかった。


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posted by タク at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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