新人賞四冠の作者が描くライトノベルはどれほどのものか,と手に取ってみたが,なんか新人賞総なめに便乗した出版社側の煽りで受賞したんじゃないかとちょっと思ってしまった。
送り狼になるために貢ぎ続ける借金抱えた派遣労働者の青年,オレオレ詐欺に復讐を誓う老人たち,性転換したい美女,ドラッグ・デザイナーから足を洗いたい女性。なにも共通点のないはずの彼らを唯一繋ぐ一つの点−−タクシーに乗って夜の街を徘徊し,融資する客を探し回る女,万城小夜。
万城小夜から融資をうけた4人の面白おかしい日常・奮闘劇を描いた作品なんだが,ハードスケジュール群像劇というジャンルを謳っており,その名のとおり4つの物語が慌しく同時進行している。
良く言えば裏社会も設定に盛り込み,ノリと勢いに任せて綴られたスピーディな文章,悪く言えば色々と詰め込んだごった煮状態な作品。ぶっちゃけ群像劇である必要性をあまり感じない作品なんで,4つの短編として小分けにして短編集にしてもよかったんじゃないかと思うが,そうしたらキャラクター同士の掛け合いは面白いけど一つの物語として見たらつまらないものになっていたと思う。なので,勢い任せに群像劇にしたのは正解だったんじゃないかと。
ただ,まとめに入るところで4つの物語を慌しく同時に終結させ,さらに融資された4組が突如姿をくらました万城小夜を探すために集結する流れはかなり強引だった。
小夜がなぜ融資をして回っていたのか,その金は一体どこから流れてきたのか,4人の客の事情に必要以上に首を突っ込んでくるのか,といった謎を解き明かすために,なんの伏線もなく都市伝説級の組織を持ち出したことで畳み始めたはずの風呂敷を広げてしまっている。ただでさえ忙しない展開が,忙しないを通り越してめちゃくちゃ引っ掻き回されたような感じだし,そのオチはなんともチープ。
ぶっちゃけ,オチを読んでみたら小夜のバックなんて金持ちのお遊び程度でもいいものを,わざわざ規模の大きい闇組織を持ち出してアンダーグラウンドな臭いを漂わせたいなら,もうちょっと伏線を張ってくれたほうがよかったんじゃないかと思う。
ライトノベルってことでキャラクターにも注目してみると,いかにもアンダーグラウンドを臭わせるクセの強い個性を持つキャラクターたちが,傍若無人を絵に描いたような万城小夜と出会うことでちょっと危ない言葉も飛び出す暴走気味な会話は読んでいてとっても楽しかった。それだけに,やっぱりオチの部分が残念でならない。
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