2009年02月22日

[ライトノベル]雪蟷螂

いつの間にか前作,前々作が『人食い3部作』になっていたらしく,〆となる3作目だそうで,どんな後付けだよとツッコミを入れたくなりつつも,相変わらずの丁寧で小説の世界に引き込まれる文章に魅了された。

今回は「愛した男を食べたい」という激情を持つ言われる部族の女性の物語。これまでは人ならざる者が人を食べようとする話だったので,テーマ的にきつくてもまだ耐えられた。だけど今回は人が人を食べたいということで,今まで以上にハードな展開を覚悟していたんだが,本当に人食いなのではなく,それくらい激情を持って人を愛するってことだったので,ちょっとほっとした。

物語は,いくつもの小さな部族同士がぶつかり合う雪山を舞台に,長い間戦い続けたフェルビエ族とミルデ族。この2つの部族が戦に終止符を打つために行われることになった政略結婚の前日から始まる。

冒頭,フェルビエの長を務める主人公のアルテシアと雪山で死を待つ少年の物語が語られたので,実はその少年の正体がミルデの者かと思って,そこから運命のうーたらこーたらでも始まるのかと思ったら全く見当はずれ。さすがにそんな安い運命話はしないのはよかったが,そんな安っぽいことしか想像できなかった自分の思考に軽く凹んだ。

ミルデに着いてからは,そこの先代族長のミイラの頭がなくなったことで,それをフェルビエの仕業として戦を再開しようとする現族長を説得するため,アルテシアが全てを見通すとする魔女に会いに行くことに。そこから,ある男と女の殺し合いから生まれた激しい愛の物語,アルテシアのたった一度だけ抱いた恋の物語が語られ,また個々の主要人物たちが抱く想いが淡々と綴られていく。その一つ一つがあまりに切ない想いばかりで,一体どういう終わりを迎えるのだろうかと,読むペースもどんどん上がっていった。

かなり劇的な終わり方を予想していたので,意外と無難なところに着地したことに拍子抜けはしたが,変に驚きとかを用意されるよりはストレートなハッピー(と受け取ったけど実際はどうなんだろう?)エンドは読了後の後味もよいのでこれはこれでよし。

これにて3部作は終了したわけだが,じゃあ次は一体どんなテーマを書くんだろうか,この人。電撃,というかライトノベルでは珍しいタイプの作家さんなんで,テーマも含めて次回作を早くお目にかかりたいものだが……。


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Posted by 藍色 at 2010年11月16日 17:52
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雪蟷螂 紅玉いづき
Excerpt: 涙も凍る冬の山脈に女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を―。長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”と....
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