葉桜の過去エピソードを中心に,今まで見せなかった彼女の心の闇を描いたり,葉桜に対する学の気持ちの整理やら二人の関係の進展やらをうまく交えてるんだけど,同時に,人類とアポストリの戦争時代に廃棄されたはずのラパーチェという兵器の登場で無駄に話が大きくなってしまっていた。
このラパーチェという存在,葉桜の母の記憶やらを持っていたことで葉桜の過去を掘り起こし,本当の意味で過去から脱却して今を生きることを彼女に決意させたという点では有意義な存在だった。ただ,葉桜がそう決意するまでの過程で,機能上の問題で暴走して取り押さえようとした警官たちを殺しまくり,さらに自衛隊まで出動して無駄に大規模な戦闘シーンを演じてくれちゃってる困ったちゃん。しかも,圧倒的な破壊力で自衛隊すらなぎ払ってるし。
これまでも,この作品にアクションがある必然性がないと言ってきたけど,今回はその思いが最上級。正直,こうしないと学と葉桜の関係に変化は起こせないのかと小一時間もの。ここまでやられると,もはや作者の好みでやってるんじゃないだろうかと思わずにはいられない。続刊を読むのなら,もうここに対してツッコミやら疑問を抱くのは疲れるだけだから諦めるべきなのかもしれない。
アクション担当の葉桜に対して頭脳担当のはずの学が,今回は頭脳方面での役割が少ないためか,アクションで活躍することに。といってもラパーチェを止めるために囮となって逃げ回るってだけなんだが。
2巻の段階で,学に頭脳担当を割り振られたことはよかったと言ったので,最初は学にまでアクションやらせるなよって思った。だけど,葉桜をラパーチェが見せた過去の幻影から取り戻すために行動のクライマックスとして,頑張れ男の子的に体使うのは悪くはない展開。ただし,ちょっとスマートすぎたのが玉に瑕。もっと必死に泥臭く逃げ回ってくれたほうが好みなんだが,キャラクター設定から考えたらそれは似合わないか。
葉桜が来た夏〈3〉白夜のオーバード (電撃文庫)
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