イザヤたちの住む御陵市に新たに赴任した修道士ラーフラ。ノウェムの炎,カルロの肉弾戦とどちらも近接寄りだったのに対し,ラーフラの能力はダビデの投石器を模倣する遠距離型。ただ,投石器そのものを模倣するのではなく,銃器を投石器に,銃弾をゴリアテを打ち倒した石に見立てたものになっており,最初「投石器とか地味すぎだろ」と思ってアクション面に不安を抱いたのもいい思い出。
今回カルロは参加しなかったが,近(中距離もありか?)のノウェムと遠のラーフラという二人のコンビネーションによって,アクションの幅が広がっており,遠距離系を持ってきたのはいいチョイスだったなと思う。特にそれを実感したのが,飛行機で逃げつつも<獣>を空中で仕留めようとするシーン。ギリギリまで我慢に我慢を重ねて<獣>をひきつけ,十分近づいたところで一気に力を解放するところはかなり熱い演出だった。
熱いといえば,ラストのほうでイザヤがまた断罪衣を発動したところも熱い。前回と違って一発逆転のご都合的な発動ではなく,1巻のラストで目覚めた"もう一人"の玻璃によって半分だけ力をもらい,ノウェムの協力を得て強引に断罪衣を発動させるところは,体が壊れても限界を超えた力を使おうとする少年漫画的な熱さが。それに,そもそもイザヤがもう一度断罪衣を発動させるため力を得る決意をしたのが,ノウェムを失うことを恐れてのことともあって,そのあたりの心理描写も熱いものがあった。
話をラーフラに戻すが,彼の立ち位置が単なる仲間というのではなく,イザヤやカルロに疑いの目を向ける異端審問者という点もよいところ。異端審問者という,イザヤの正体に対して気兼ねなく疑う者が存在が登場したことで,今後のイザヤのニセモノぶりにもようやくバレたらやばいという緊張感が出てきたし,"もう一人"の玻璃のこともあって,常に周囲を煙に巻くカルロとのやりとりも含め,足場を引っ掻き回す存在として活躍してほしいところ。
1巻のときに久しぶりに萌えというものを感じさせてくれやがったノウェムは,今回もすばらしかった。
人形でありながらイザヤのことになるとやたら感情的になるけど,そんな自分を理解できずに思い悩む姿は思わずゴロゴロしたくなること必至だし,イザヤのノウェムに対するツンデレぶりも手伝っていいコンビだと言わざるを得ない。しかも,今回は二人(というか一人と一体?)の距離にも進展があって,なんかもうノウェムを幸せにしやがれよ,こんちくしょーだ。