2007年08月04日

[cinema]河童のクゥと夏休み

監督・脚本:原恵一
原作:木暮正夫
出演:冨沢風斗,横川貴大,植松夏希,田中直樹,西田尚美,なぎら健壱,ゴリ,他
公式サイト:http://www.kappa-coo.com/

クレしんの映画を大人も楽しめる作品に仕上げた監督が,5年の歳月をかけただけのことはある。一見すると夏休みの子供向けアニメの一つと思わされるような題材と絵柄だが,家族でワイワイ楽しむようなものではなく,見た目から想像もできない胸の痛くなるほど切なくなる作品だった。

作品全体から感じ取れるのが,どうにも"人"という立場から見ると人間がいかに傲慢な行動を他者に向けているかということ。

冒頭,クゥとその父親が自分たちの住処を奪おうとする武士を説得しようと試みるも,その武士とお抱えと思われる商人の密談を聞かれたと思いこんで口封じに斬り殺されるシーンが出てくる。この過去のシーンはCMなどでも度々出てくる父親の腕のミイラとの対面という形で思わぬ伏線となっており,この対面シーンでの人に対する不快感をもたらせてくれる。
冒頭からしてこの作品での"人"の河童という存在に対する立ち位置を決定付けている。それは「人は恐ろしく,相容れない存在」であること。

人と河童が相容れないことを最も象徴するのがクゥの存在が知られてからの報道合戦。河童に限らずだが,例えば両足で立つアライグマやら多摩川に現れた某アザラシなど,珍しいというだけでその対象を見ようと人が集まって大事になってしまうことがある。この作品でも,クゥの存在が知られてからは主人公一家の生活などお構いなしに報道陣や野次馬が詰めかけたり,家の中を盗撮しようとしたりと,どこまでも人は節操がない。だが,そういった行動に一見迷惑そうにしながらもテレビに映ることを楽しむ節のある主人公一家に対して,楽しむどころか恐怖を感じるクゥという対比は見ていて空恐ろしくなる。
それまで,クゥという存在を守ろうとしていた一家を見ていると多少のトラブルはあれど人と河童との共存はうまくいくのではないかと思えた。しかし,クゥの存在を報道されるようになってからはクゥの感じている恐怖を理解するものは飼い犬のオッサンという存在だけで,ここに人とその他の決定的なすれ違いが起き,その結果,クゥのテレビ出演という事態発生後にものすごく後味の悪い悲劇が待ち受けており,人という存在に対して心から怒りを覚え,その悲劇に泣かずにはいられないほどだった。

数々のエピソードによって怒りやドス黒いものを抱きそうになったが,それでもクゥは決して全ての人が悪いわけではなく,相容れることはなくとも自分を世話し,守ってくれた主人公たちに感謝の言葉を投げたことによって,一気に怒りの気持ちも失せ,そして彼らの別れが訪れた時に感極まって涙を流さずにいられなくなった。
ラベル:映画 アニメ
posted by タク at 16:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 2007年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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