2007年08月13日

[novel]メシアの処方箋

メシアの処方箋メシアの処方箋
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] メシアの処方箋
[著者] 機本 伸司
[種類] 文庫
[発売日] 2007-05
[出版社] 角川春樹事務所


前回はブラックホールを作ることができることかで,今回は救世主を作ることができるのか。なんとも現実離れしていそうなSF題材を使っているのに妙に現実味を感じさせる作品だったが,作者の前作である『神様のパズル』と比べると,作品としての楽しさというものがなくなっていた。

作品としての楽しさを感じさせなかった最大の要因として挙げられるのが,悪い意味で一癖ある登場人物たち。その最たるものが陰の主役とも言えるだろうロータスという研究生で,ヒラヤマの氷河湖の中にあった方舟から見つかった木板に書かれている暗号を解くためにネット公開させ,それを解いた際の賞金は主人公に全て出させたり,暗号に書かれていた救世主を作るための施設を借りるために裏のある組織に主人公を行かせ,自分は安全なところで指図するだけだったりと,何かと傲慢なのがいただけない。それでいてあまり大した活躍などもしないのでイライラしてしまった。また,そんなロータスに文句を言いつつも「(救世主が何を言うのか)知りたくないのか?」という言葉でずるずる流されてばかりで,なんとも受け身すぎるのもいただけないし,生物倫理の欠片もない遺伝子研究員や,訳ありの医者,救世主を産むための母胎となる関西弁の女など,どこを取っても不快感を感じる自分勝手さを持っている。こういったキャラクターたちだからこそ物語が進み,また最後のオチに繋がるのかもしれないが,せいぜいまともなのがプログラマーの上杉という人物だけというのはなんとも。

また,ちょっとした陰謀めいた巨大組織がいるわりには大した妨害などもなく,非常に困難だと思われていた救世主の遺伝子情報もあっさり作り出してしまうのもなんとも緊張感に欠ける展開だった。もうちょっと苦労してもいいのではないかと思ったが,本作は救世主を作り出すだけでなく,それが成長した時に何を語るのかを聞くのがメイン。そのため,生まれた救世主を巨大組織から守るにはどうしたらいいのか? という別の緊張感とどんな言葉が語られるのかという興味が提示される。だが,緊張感という面ではうまく活かせているとは言えず,どうにもサスペンスというものはうまく描けないのかもしれないとちょいとがっかりな展開。また,最大の焦点である救世主の語る言葉も提示されずに死んでしまうというオチでなんとも後味の悪いもの。正直,フィクションを描くにも救世主のようなファンタジー要素を入れずにSF一辺倒にいったほうがいいものが書けるんじゃないかと,そんな風に思った。
タグ:小説 SF
posted by タク at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/51191600

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。