2007年09月06日

[novel]風の影 上・下

風の影〈上〉 (集英社文庫)風の影〈上〉 (集英社文庫)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 風の影〈上〉 (集英社文庫)
[著者] カルロス・ルイス サフォン
[種類] 文庫
[発売日] 2006-07
[出版社] 集英社

風の影〈下〉 (集英社文庫)風の影〈下〉 (集英社文庫)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 風の影〈下〉 (集英社文庫)
[著者] カルロス・ルイス サフォン
[種類] 文庫
[発売日] 2006-07
[出版社] 集英社


本国スペインで爆発的なロングセラーを記録したというミステリーロマン。読んでみるとミステリーの王道な展開なのだが,そこに謎の死を遂げた作家・フリアン・カラックス,フリアンの本を焼いていく謎の男など,好奇心をくすぐる設定が散りばめられており,とても魅力的な作品。ストーリーの展開も面白いことは面白いのだが,本書はいま一つ突き抜き切れなかったという印象を抱いた。

本書は主に4部からなっていて,主人公が子供の時,青年になってからの物語,ある人物の手記,そして完結編である。

上巻を読んでいた時,主人公の子供時代を何故描くのかが分からなかった。何人かキーになる人物との出会いや,本書のメインとも言える「風の影」という本と主人公が出会ったところを描くのは悪くはないのだが,それ以上に10歳の子供が,倍以上の盲目の美女に恋をして,その女性とばかり一緒にいようとするという痛々しいものを突きつけられて,しかもその人物は重要人物でもないというオチつき。だが,後半になって主人公の子供時代を描いた理由や,そこから青年になるまで物語が動かなかった理由などを知ることができ,多少は疑問が氷解したように思う。でも,それでも痛々しかったわ。

子供時代に主人公の恋話があったように,青年になった時も親友の妹と恋愛話が「風の影」の作家であるフリアンがどうなったのかを追うミステリーの中で展開される。まぁ,ミステリーでもサスペンスでもなんでも,ラブロマンスがストーリーに絡むことは多々あるものの,本書におけるラブロマンスの位置づけはなんとも微妙。まずミステリー自体にあまり絡んでいるように感じず,やや強引に埋め込んだという印象を受けるし,何よりも主人公がミステリーを置き去りにして親友の妹とのラブロマンスに走っていこうとしてしまったりして,相乗効果が起きずにそれぞれ単独で展開されていってしまい,行ったり来たりの繰り返しをしてしまっているのである。もう少しミステリーに深く絡むようにしてほしかったというところ。

あと,本書が最大に盛り上がるのが完結の前に明かされるフリアンの謎などが明かされた手記のシーンで,そこで畳みかけるように今までの謎が全て解き明かされる。そこにあっと驚く真実があるわけではない。だが,その手記で(それまでも悪い奴だという印象を与えてきたが)フリアンに敵がいることが伝えられ,そいつが諸悪の根源みたいなことが明かされたことで悲劇性というものが生まれ,また手記を残した人物の末路を既に知ってしまっているために,思わず涙がこみ上げてくるのだ。それまでは微妙な作品になりそうだったのだが,この手記の存在で一気に本書が面白くなっていると断言できる。

エピローグや本編の後の登場人物たちのその後というものは別として,手記の内容公開で本編を終わればよかったのだが,その後に悪役との決着をつけるシーンが登場してくるのがげせなかった。確かに,手記の内容を知ったことで悪役に対する怒りや,悪役がやられた瞬間には爽快感すら覚えたものだが,手記がなくても爽快感は得られたと思うし,物語の余韻を味わうという意味では手記を最後に持ってきたほうがよかったんじゃないかなと思った。まぁ,個人の趣味の問題なのだろうけども……。
posted by タク at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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