2007年11月17日

[ライトノベル]つきこい

つきこい (電撃文庫 や 5-4)つきこい (電撃文庫 や 5-4)
販売元 : Amazon.co.jp 本
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[タイトル] つきこい (電撃文庫 や 5-4)
[著者] 山科 千晶
[種類] 文庫
[発売日] 2007-11
[出版社] メディアワークス


電撃hpで連載されていた中編ラブ・ファンタジーに,短編の書き下ろしを追加したもの。この作品で描かれる2つの恋は,書き下ろしで描かれる少女漫画のようなお伽話のようで,描かれる人物たちの心情によってどこかリアルに感じる不思議な魅力を持った作品。

ストーリーの流れは,ある少女が父親を待っている間に出逢った少年にある話をする「モーニングムーン」という書き下ろし短編から始まり,そこで表題になっている「つきこい」の物語が描かれる。この「つきこい」は,副題に「続・月下少年」とついていて,この文庫の最後に収録されている「月下少年」の続編という位置づけらしいのだが,連載時も「月下少年」のほうが先に連載されたのに何故逆にしたのか? と少々疑問に。疑問に思いつつも読んでみると,「つきこい」を先に持ってきたのは正解だった。

「つきこい」では渋谷の交差点で死に別れた恋人を待ち続けていると噂される女性イズミから,主人公・新谷をその恋人と間違えて声をかけたところから始まる。最初は怪しい勧誘だと思った新谷も,イズミの噂を聞き,何度か彼女を遠目から見かけるようになってからというもの,その年上の女性が持つ魅力に徐々に惹かれていって……という感じの話。

これ読んでいて,新谷が遠目からでも姿が見えるだけで満足だと言ったり,声をかけると自分が抱いてる幻想が消えそうだからといってうじうじしてたり,年上の女性と関わる冴えない男の心情というものが痛いくらいに共感でくる描写が多い。この作家さんは女性だというのになんと思春期のうじうじ系の男の気持ちがリアルな心情が描いてるのだろうか。

新谷という妙に共感できるキャラクターが主人公に配置されたことで一気に物語に吸い込まれたのだが,この「つきこい」のいいところは,ヒロインのイズミの神秘性を最後までしっかりキープしていたこと。
死んだ恋人を何年も待ち続けている年上の女性というだけに,妄想力たくましい人たちにとってはその神秘性にときめきというものを抱くこと必須だと思うのだが,大体の作品ではヒロインの心情や謎となっていたものの真実が明かされたりして興醒めしてしまう。しかし,ここではイズミが持つ神秘性というものが崩れることは決してない。彼女が待ち続けているという「トキ」という少年のことも,その「トキ」を待ち続けるイズミの心の吐き出しも描かれることがないためだ。あくまで描かれるのは新谷の心情のみ。だからこそ,新谷というキャラクターに最後まで感情移入することができ,最後の決断にもとても共感することができた。

「つきこい」が終わると「モーニングムーン」の後半が描かれるのだけど,正直この後半は色々と描きすぎという印象が拭えない。多少ぼかしてはいるものの,結局は「つきこい」の未来の話で,新谷とイズミがどうなったのかがはっきり提示されてしまっている。できればそこはこちらの想像だけですませてほしかったところ。

最後にはイズミの女子高生時代,トキとの出逢いと別れを描いた「月下少年」が収録されているが,こっちと「つきこい」のどっちを先に読むかで「つきこい」に対するイメージがだいぶ変わるようになっている。

「月下少年」で描かれるイズミは,神秘性を持ったあの年上の女性とはイメージがまったくかぶらない,いかにも女子高生という感じのキャラクターになっている。そのイズミの視点から描かれていくのだが,女性が描いているだけにリアルなのかもしれないが,まったく実感の沸かない心理が多く,描かれた心理がすんなり入ってこない。視点が女子になっているというのもあるのだろうが,なんせついさっきまでみすてりあすな女性というイメージがあるだけに,戸惑いというものも感じる。正直こっちを先に読んでいると,イズミというキャラクターのイメージから神秘性というものが失われてしまうので,本当にこっちが先にこなくてよかったと思う。

ちょっとネガティブな感じに書いてしまったが,話自体はそんなに悪くない。ちょっと昔の少女漫画で描かれるようなファンタジーな恋愛ものという感じで,ちょっと切なくてほろ苦く,そして不器用なイズミの感情などは,共感とまではいかなくても理解できるなって感じ。でも男の身としてはやっぱり感情的に深入りできるものではなかったわ。
posted by タク at 00:21| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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