2007年11月28日

[cinema]once ダブリンの街角で

原題:Once
監督・脚本:ジョン・カーニー
製作:マルティナ・ニランド
出演:グレン・ハンサード,マルケタ・イルグロバ,他
公式サイト:http://www.oncethemovie.jp/

ダブリンを舞台に,ストリートミュージシャンをしている男がある女性と出逢いを描いたドキュメンタリー風味の音楽映画。そこにちょっとしたラブロマンスをエッセンスとして注入することで,大作映画に食傷気味になった胃を癒す効果をもたらしている。

この映画はなんとも不思議なもので,ミュージカル映画のように歌と踊りで演技をするようなことがないのに,全編歌で溢れかえっている。かといって,その歌がストーリーから離れて単独で存在するかというと,魔法でもかけたのかと思うくらいに不思議とストーリーに溶け込んでいる。また,さも実在のミュージシャンを取材で追いかけているかのような日常を感じさせる出来になっており,本当にフィクション映画なのかと感じてしまう。

この一見浮きそうでいながら,歌がストーリーにうまく溶け込んでいる要因は,ストリートミュージックという日常に溶け込みやすい音楽を取り扱ったことだと思う。

実際のストリートミュージシャンというものがどういうものかは全然知らない。しかし,そういう人たちは歌で自分や自分の気持ちを表現し,即興で音楽を作ったりもするんだろうと思う。というか,この作品で描かれている主人公がそういう人物で,本当はどうなのかは知らないのに,ストリートミュージシャンというのは実際こういう感じなのかな,と思わせるには十分すぎるくらいにリアルな日常が描かれているのだ。これだけ説得力のある日常を見せられると,実物を知らなくてもリアルだと感じるには十分すぎるものがある。

また,この映画で歌われる歌はどれもすごくよくて,激しいロック調から,歌声が心に染みるバラードまで,多彩な音楽によって映画が彩られている。主人公を演じている人は,ヨーロッパのほうでは有名な歌手のようで,この映画のために書いた曲もあるらしい。正直,この人の歌は一曲だけでも十分すぎるくらいに満足できるのに,何曲もあるのだ。洋楽とか別に好きではないのだが,これはCDを今度買ってこようかと思った。

歌のことばかりに気をとられがちだけど,ストーリーも平凡ながら心が暖かくなるものだった。
ある男女が出逢い,少なからず惹かれ合っているとなると,最後は必ず一緒になると思っていた。主人公は恋人がいるものの,連絡がろくにつかないといった状態になっていたりしてフリーに近い状態だし,女性のほうも子供も夫もいるものの,別居状態。王道のラブストーリー映画なら,うまい具合に二人はお互いの現在のパートナーと別れてくっつくものなんだけど,本作はそんなことはせず,二人はあくまでも心の通い合ったよき友人を最後まで貫き通している。そこがなんだか新鮮というか,映画って意外とそういうものがなかったかなと思う。まぁ,脇役とか恋のライバルとかにはよき友人止まりとかいるけど,さすがに主役同士となるとあまりお見かけしない。

全体的に実にすばらしい映画だったと思う。だが,この映画を観て損は絶対しないと断言できるだけの自信はあるものの,批評家がしているような大絶賛の嵐になるような映画ではない。冒頭でも書いたが,あくまで「大作映画に食傷気味になった胃を癒す効果」であり,ハリウッド大作やヨーロッパとかの濃い芸術作品などを観まくってる人には抜群の癒し効果にはなるだろうから絶賛するのも頷ける。しかし,普段あまり映画を観ない人にとっては,いい映画ではあっても,その次に超大作映画を観てしまえばあっさり頭の片隅に追いやられるような,そんな映画ではないかと思う。だから,劇場でわざわざ観るというよりは,ちょっと大作ばかり続いて落ち着いた作品が観たいと思った時に,レンタル屋でちょっと手に取って観るというのが一番いい鑑賞になるんではないだろうか。
タグ:映画 音楽
posted by タク at 23:41| Comment(0) | TrackBack(5) | 2007年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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