2008年03月25日

[cinema]ノーカントリー

原題:No Country for Old Men
監督:ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
製作:ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン,スコット・ルーディン
出演:トミー・リー・ジョーンズ,ハビエル・バルデム,ジョシュ・ブローリン
公式サイト:http://www.nocountry.jp/

第80回米アカデミー作品賞や監督賞をはじめ,数々の賞を受賞したコーエン兄弟最新作。
麻薬密売人の金を持ち去り,命を狙われることになった男モス。機械のように殺しをしていく冷酷な殺し屋シガー。モスとシガーの行方を追う時代に取り残された老保安官ベル。3人の男たちの,血と終わりのない暴力の果てに見る運命をスリリングに描いた現代ドラマ。

この映画はとにかくいろいろと考えさせられる映画だった。アカデミー作品賞を受賞したとか,ハビエル・バルデムの不気味な存在感を発する殺し屋がすごいだとか,そんな話題性がちょっと先行しすぎてる感があるが,そんな話題性に釣られて観にいくと,本作が提示しているであろう数々の問いかけを受け止められないと痛い目を見ることは必須。間違ってデートで観に来ようものなら重苦しくなる。

何より重いのが,ハビエル演じる殺し屋の機械的で無情な殺しの連続などではなく,モス・シガー・ベルの3人の男たちの決着をつけるところ。それまで追われるモスと追うシガーという緊張感あふれるスリラーあり,逆にモスがシガーに反撃するというちょっとしたアクションありと,とにかく暴力の連鎖があったので,そこにベルが加わることで一体どんな結末を迎えるのかと思っていたら,思わず身を乗り出しそうになるくらい予想外で,それはあまりにもあっけなく,大きな喪失感と脱力を覚えるものだった。

この結末に行き着くまで,3人の男たちはそれぞれ自分がこれから行うことに対して絶対の自信を持っていた。モスは逃げ切れることを,シガーはモスを殺して金も取り戻せることに疑いすら抱いていなかったし,ベルはモスを必ず助けられると信じていた。こういう展開だと普通の映画なら生き残るための壮絶な戦いが繰り広げられるんだが,この映画はそんな彼らの思惑など無視するかのように,彼らを上回る社会の理不尽さ,社会の暴力によって強引に幕を下ろされてしまう。

その終わり方は,今日ニュースなどで流れているような事件のように理不尽で,でもこの映画の舞台は1980年代と今より20年くらい前で,さらにこの事件を経て今は理解できない,昔はよかったとぼやくベルに彼のおじが,過去のベルが体験したものと同じくらい理不尽な殺人事件の話を聞かせる。それは,決して今も昔も理解できない理不尽な犯罪というものがなかった歴史などないのだと,昔のほうが良かったというのも幻想だと告げているのかと思った。

そしてラスト,時代に取り残され,理不尽なばかりで希望も平穏な場所もないと感じていたベル保安官が死んだ父親の夢を観たことを語るシーンで終わる。

その語りから,希望と平穏はまだ残されている,ただしそれは彼が生きる国ではないということを示唆しているのかな,と「No Country for Old Men」という原題からちょっと推測してみた。ただ,それだとあまりに救いがなさすぎるのがあれなんで,もうちょっと前向きにこの世界にも希望と平穏は残っているということであってほしい。
posted by タク at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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