2008年05月06日

[cinema]ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

原題:There Will Be Blood
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:アプトン・シンクレア
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ダニエル・デイ=ルイス,ポール・ダノ,ディロン・フレイジャー,ケビン・J・オコナー,キアラン・ハインズ
公式サイト:http://www.movies.co.jp/therewillbeblood/

1920年代のカルフォルニアの石油産業を舞台に,石油によって莫大な富を手にした男の壮絶な欲望と,その富に寄生して野心を達成しようとする男の確執を,重量感たっぷりな演出で描き出した大河ドラマは,観るものを圧倒して2時間38分という上映時間を感じさせない作品だった。

本年度アカデミー賞で主演男優賞を受賞した主人公のダニエル・プレンビュー演じるダニエル・デイ=ルイスは,毎年受賞を疑問視させるアカデミー賞では珍しく受賞に文句のつけどころがない。己が手にする富は全て自分のものにしようとする果てのない欲望や,欲望のためなら家族だろうとなんだろうと利用しようとする独裁者ぶり,そしてそれほどの人物でも人が集まるカリスマ性をリアルに,圧倒的な存在感をもって体現している。

また,そんなデイ=ルイスの圧倒的な存在感を前にしてもなお観ているこちらに強烈なインパクトを与えてくるのが,ポール・ダノ演じるポール・サンデー。サンデーの,異常なまでの他人に対する支配欲や,プレンビューの金を使って自分の宗派を広げようと目論む野心は,プレンビューの怪物ぶりを時に圧倒するほど。

俳優のすごさもさることながら,ドラマに更なる重量感を持たせているのが音楽。普段な音楽は一切なしで静かなもんだが,なにかが起きるというときに,これでもかと言わんばかりの大音量かつ不安感を駆り立てるような音楽が効果的に使われ,監督曰く「一種のホラー映画と捉えている」という言葉どおり,ホラーのような恐怖を感じるシーンになり,それがまたプレンビューの怪物ぶりをより印象深くしている。

文句のつけようが一見なさそうな圧倒的な出来だが,一点だけケチをつけたいところが。それは,プレンビューと彼の息子の確執のところで,この辺の描写をもう少し描いてほしかった。

なぜかと言うと,ラストに描かれたこの親子の確執のシーンが他のシーンと比べてあまりに唐突すぎて納得いかないから。確かに,プレンビューは息子を交渉の場をやりやすくするための道具として利用することを実際にやっていたし,息子よりも石油のことを優先することもあったにはあったが,それでも彼なりに息子をとても愛しているというのが全編にわたって描かれていた。

そういった愛情表現が伝わってこなかったのかもしれないが,それならそういう描写がほしかった(もしかしたら,放火するシーンがそれに当たるのかもしれないが)。とにかく,本編で描かれている範囲では決定的なものが欠けているため,この最後がプレンビューを本当の孤独にするために完成されたものに無理やりねじ込んだようにしか見えず,もう少し納得のいくシーンを入れてほしかった。
タグ:映画 ドラマ
posted by タク at 19:48| Comment(0) | TrackBack(2) | 2008年鑑賞映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 」★★★★オススメ ダニエル・デイ=ルイス 、ディロン・フレイジャー主演 ポール・トーマス・アンダーソン 監督、2007年、アメリカ、158分 一攫千..
Weblog: soramove
Tracked: 2008-05-14 21:34

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
Excerpt: うーん、ダニエル・デイ・ルイスを敬愛する私としては この監督、彼の起用を間違っていないか などと、 エラソーなことを思ってしまいました。 もちろん、ダニエルならではの、 迫真の演技は 随所..
Weblog: 月夜の緑
Tracked: 2008-05-18 09:03
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