2008年05月17日

[ライトノベル]烙印の紋章 たそがれの星に竜は吠える

前作『レギオン』でかなり抽象めいた精神の物語を紡ぎだしたが,今回は"うつけ者"と蔑まれてきた王子と同じ顔の奴隷が,王子に成り代わって活躍していくという王道ファンタジー。

ストーリーは,ライトノベルとしてではなくファンタジーとして王道。奴隷として剣闘士になって殺し合いをさせられている状況や,そこに至るまでの過程,さらに王子の替え玉になるまでの過程は他のファンタジーでも散々読んできたと言えるくらいベタだ。だが,そんなベタな展開なのにどこか違う感覚を覚える。

それは,この作品の主人公がまだ経験不足もあって未熟な部分があるものの,心も身体もある程度完成された状態でいるため,この手のものにある少年の成長物語とは一線を画している点だ。

主人公も多くの疑問を抱えて悩み,それらについて理解し,乗り越えていくといった展開も描かれており,これを成長と位置づけることもできなくもないので,一概に主人公の成長物語ではないと言い切れないが,少なくとも本作においては成長というより,主人公の実力がどれほどのものなのかを披露するものになっている。

主人公のほうがある程度完成されている反面,ヒロインとして出てくる和平のため婚約した敵国だった姫君のほうは,幼く,騎士の国にいたがゆえにひねくれた主人公と一触即発になったり,自国の騎士が謀反を起こしたことで徐々に一国の主としての自覚に目覚めていくという成長の物語が用意されている。

王道ファンタジーだと主人公とヒロインの両方の成長物語はあるものの,貧弱な読書暦の範囲においてヒロインだけ成長していくという話は今までお目にかかったことがない。そのため,王道なのにどこか違うという感覚を覚えされる。

文章も読みやすく,かといって必要以上に文章を軽くするわけでもなく,戦闘シーンなんかは「どかーん」といった効果音を使用して行を稼いでいくラノベらしからぬもので,効果音は極力使われず,大砲が撃たれたり,剣と剣がぶつかり合うシーンはきっちりと言葉で説明されているので読みがいがある。また,設定説明もくどくないし,設定自体もラノベにありがちな独自設定の数々もなく,その点も好印象だ。

物語はこれだけで完結しているものの,主人公やヒロインがやり残していることが数多くあるし,今後どうなっていくのかとても気になるので,早く続編を願いたいところ。そしてもし続編が出るなら,一点だけ不満だった副題にもついてるくせにろくに活躍も存在感もなかった「竜」の出番をもっと増やしてほしいところである。

烙印の紋章―たそがれの星に竜は吠える (電撃文庫 す 3-15)
杉原 智則
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posted by タク at 20:18| Comment(0) | TrackBack(0) | novel | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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